66 こんなことにはうんざり

 

こんなことにはうんざりで、安らぎを与える死を望む。

たとえば、乞食にでも生まれた方がいい人間を見るとき。

ろくでもない人間がきれいに着飾っているのを見るとき。

絶対だと信じていたことが不幸にして裏切られるのを見るとき。

 

黄金の栄誉が破廉恥に与えられるのを見るとき。

貞淑な処女が手荒に娼婦にされるのを見るとき。

完全無欠が理不尽に貶められるのを見るとき。

権力が不安定な統治で不能に陥るのを見るとき。

 

学芸が当局によって口をつぐまされるのを見るとき。

下手糞が、学者顔して、上手を指図するのを見るとき。

率直な真実が愚か者扱いされるのを見るとき。

囚われの身の善が悪徳に隷従するのを見るとき。

 

  こんなことにはうんざりで、いっそ死んでしまいたい。

  愛する人が一人きりになるのでその願いもかなわない。

 

 

【私の鑑賞】

珍しいことに詩人が社会批判をして、不満を述べている。

詩人は、今の世の中の実情が虚飾に満ち、何もかもに嫌気がさしている。

何を見てもうんざりするばかりである。

こんなことなら死んでしまった方がましだと思うが、愛する人を一人残していくことになると思えば、その決心もつかない。