こんなことにはうんざりで、安らぎを与える死を望む。
たとえば、乞食にでも生まれた方がいい人間を見るとき。
ろくでもない人間がきれいに着飾っているのを見るとき。
絶対だと信じていたことが不幸にして裏切られるのを見るとき。
黄金の栄誉が破廉恥に与えられるのを見るとき。
貞淑な処女が手荒に娼婦にされるのを見るとき。
完全無欠が理不尽に貶められるのを見るとき。
権力が不安定な統治で不能に陥るのを見るとき。
学芸が当局によって口をつぐまされるのを見るとき。
下手糞が、学者顔して、上手を指図するのを見るとき。
率直な真実が愚か者扱いされるのを見るとき。
囚われの身の善が悪徳に隷従するのを見るとき。
こんなことにはうんざりで、いっそ死んでしまいたい。
愛する人が一人きりになるのでその願いもかなわない。
【私の鑑賞】
珍しいことに詩人が社会批判をして、不満を述べている。
詩人は、今の世の中の実情が虚飾に満ち、何もかもに嫌気がさしている。
何を見てもうんざりするばかりである。
こんなことなら死んでしまった方がましだと思うが、愛する人を一人残していくことになると思えば、その決心もつかない。