65 奇跡の力

 

永遠の真鍮、石の建造物、堅い大地、果てしない海も、

みな、死の定めに支配される。

美は、死の怒りの前にどんな訴訟を起こすというのか、

その訴訟の力は一輪の花よりも強くはないというのに。

 

夏の日に甘い香りを放つ花はどのようにして

破城攻撃の破滅的包囲を凌ぐことができよう?

堅固な岩盤も、頑丈な鉄の門も

「時」の前には屈するというのに。

 

ああ、考えるのも恐ろしい!どこに

「時」の至宝を「時」の柩から隠せるというのか?

どんな強力な手が「時」の早足を抑え、

誰が「時」の美の略奪行為を禁じえよう?

 

  誰にもできはしない。できるのは、この黒いインクの中で

私の愛する人が永遠に輝きを失わないという奇跡の力だけ。

 

 

【私の鑑賞】

「時」の前には、永遠と思われていた真鍮の記念碑も、石の建築物も、堅い大地も滅びる運命にある。

ましてや夏の日に芳しい香りを放つ花の美しさは「時」の手から逃れる術はない。

誰にも「時」の暴力的手から「美」を略奪する行為を止めることはできない。

だが、ここに奇跡がある。

詩人がインクで書きとめる詩の中に、私の愛、私の恋人は永遠に生き続けるのだ。

詩人は、自分の詩が永遠に人々の心に残ると信じている。

詩人の詩に奇跡の力があると信じている。