62 自惚れ

 

私の目、私の心、私の身体のいたるところ、

自惚れの罪が支配する。

私の心の奥深く根を張っているので、

この罪につける薬もない。

 

私の顔ほど魅力的なものはなく、

姿かたちが整い、高潔なものはほかになく、

自分で自分の価値を

誰よりも優れていると決め込んでいる。

 

ところが実際に私を鏡にうつせば、

歳月にさらされた無残な姿、

私の自惚れとは正反対、

自惚れが己に罪なことを知る。

 

  私は自分のために君(つまりは私自身)を称え

  私の老体を君の若さの美で飾り立てている。

 

 

【私の鑑賞】

詩人はなぜ自分が誰よりも顔かたちが魅力的で、心も高潔であると自惚れているのか。

鏡で自分を映せば、そこには歳月に蝕まれた醜い姿が映るだけである。

詩人が自分を装飾して称賛するのは、詩人と青年が一体であり、一つであるということにある。

だから自分を褒めることが青年を称賛することではあるが、そこには青年とは離れてしまった、詩人の孤独と寂寥感の痛ましさが漂う。

自惚れが罪だとするのはそこにあり、鏡に映った醜い自分の姿はその罪の表象である。