くたびれはてた夜、君の姿が
私の重い瞼を閉じさせないのは君の意志か?
君に似た面影で私の目を惑わせ
私の眠りを妨げるのが君の望みか?
君が君の身体から遠くへと送り出した
君の魂は私の所業を詮索し
私の恥ずべき行いや無為に過ごした時を探り出すのが
君の嫌疑のはけ口であり、本音なのか?
いや、君の愛は多いとはいえ、それほど大きくはない
眠れないのは、私の愛ゆえだ
私の真実の愛が私の休息を破って
君のために夜警を務めるのだ。
君ゆえに私は見張りをしているのに、君はどこか別の場所で
私から遠く離れた処で起きていて、別の誰かと近しくしている。
【私の鑑賞】
このソネットは、27番や43番と同じように、嫉妬(疑い)の気持からくる不眠を謳っている。
構成としては、最初の8連では不眠の原因を「君」のせいであるとし、最後の6連では不眠の原因が実は自分にあるとしている。
最初は、君の面影がちらついて眠ることができない。それは君が私の心を疑っているからだとする。
そして眠れないのは自分の愛ゆえであり、自分から遠く離れた青年のことで嫉妬の思いで眠れないのだと吐露している。
君の愛は多いがそれほど大きくはないというのは、青年は多くの人々に愛を示すが愛の深さはそれほどでないということを感じさせる。