59 太陽の下に新しきものは

 

新しいものは何ひとつなく、今あるものは

かつてあったものとすれば、我々の頭脳はどこまで欺かれ、

新しいものを産み出そうと苦労するのは、

二番煎じの過ちを繰り返すことでしかないのか?

 

ああ、記憶が過去を振り返って

太陽の運行の五百年前に遡り、

古書に君の姿を見出せたらと思う、

心の思いは最初文字で記されたのだから。

 

昔の人が記録したものを見て

私が驚きを以て書いた君の姿と比較して、

我々が進歩したか、昔の人の方が優れていたか、 

あるいは同じことの繰り返しか分かるというものだ。

 

  私は確信している、いにしえの賢者は

  今より劣ったものに賛辞を贈ったのだと。

 

 

【私の鑑賞】

『伝道の書』には「太陽の下、新しいものは何ひとつない」と書かれているが、それは本当か?詩人はそれに反発する。

もし、太陽の下に新しいものは何ひとつないとしたら、詩人の書く詩も、先人の繰り返しでしかない徒労となる。

本当に新しいものがないのかどうか、五百年前の作品と較べてみればよい。

(五百年という歳月はフェニックスの甦りの年数に相当する)

今の詩が進歩したか、過去の詩が優れているか、それとも今の詩は昔のものの繰り返しか、比較してみるとよい。

詩人は確信している、今の(自分の)詩の方が優れていると。そして過去の詩に書かれた誰よりも「青年」の方が素晴らしいと信じている。

青年にかこつけて実は詩人は自分の詩を語っている。