57 恋は道化者

 

私は君の奴隷、お呼びがかかるまで

待つこと以外することもない。

私が惜しむべき貴重な時間などまったくなく、

君が命じるまではやるべき務めもない。

 

私の主人である君を待つための時間なら

それが果てしなく続こうとも愚痴は言うまい。

君が、君のしもべに別れを告げたからには

君の不在のつらさも苦痛とは考えまい。

 

邪推でもって訊ねもすまい、

君がどこにいて、何をしているかなどと探りもすまい。

真面目な奴隷のようにしてじっと待ち、

廻りにいる人たちを君が幸せにしていることを思うだけ。

 

  恋はまことに道化者、君のお望みしだい、

  君が何をしようと文句を言わない。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は青年の心の奴隷。

詩人の時間は青年のためにあり、すべてが青年のための時間。

だから、青年が去った今、永遠に続くと思われる時間も、青年を待つための時間と考えれば苦痛ではなくなる。

青年は自分の処を去ったが、邪推で自らを苦しめるようなことはせず、青年がいる場所では、そこにいる人はなんと幸せであることかだけを考える。

詩人は青年の奴隷であり、恋は道化役。

だから青年が何をしようと、恋は悪く思うことはない。

だが、詩人の言っていることと本心は裏腹である。