56 二人を隔てる岸辺

 

麗しき愛よ、おまえの精力を蘇えらせよ、そして

おまえの切っ先を情欲より鈍いと言わせるな。

今日食べさせてその情欲を鎮めたところで、

明日には元の力に研ぎ澄まされるだけだ。

 

だから、愛よ、変わらずにいるのだ。今日満たされて

おまえの飢えた目を満腹感で閉じようとも

明日は再び目をあけるのだ。そして、

いつまでも惰眠で愛の活力を殺いではならない。

 

この悲しい一時(いっとき)を海原と見なせば、

岸を隔て、新しく婚約した二人が

毎日その岸辺にやってきては、

愛が戻って来るのを見て、いっそう幸福となるように。

 

  それを冬と呼べば、気苦労は多くとも、

  夏の到来が幾重にも望ましく、貴重なものとなる。

 

 

【私の鑑賞】

情欲は満たせば、またその情欲に火がついて渇きを増す。

情欲は、満たされることなく募るばかりである。

二人が別れ別れでいれば、その情欲も満たすことはできない。

二人の悲しい別離は、二人の間に大洋があると考えよう。

二人は毎日その両岸にやってきては、愛の気持を高め合う。

二人を分かつこの別離の時を冬と思えば、二人の再会は、待ちに待った夏の到来にも勝る。

満たされない愛の別離を自ら慰める詩。