シェイクスピアのソネット
 

114 眼が毒見する

 

君とともにあり王様気分になった私の心は

君主につきものの病である追従を飲み干すのか

それとも私の眼が真実を語るというのを口実に

君への愛がこのような錬金術を眼に教え

 

化物や怪物から

君の美しい姿に似せた智天使を作りだし

すべての醜いものを完璧な美しいものとするため

観たものをすばやく眼の光線に集合させるのか?

 

ああ、最初にあるもの、それは私が眼にする追従

私の偉大な心は王者のごとくそれを飲み干す

私の眼は私の心が喜ぶものをよく知っている

だからその口に合う美酒を調合する。

 

  たとえそれに毒が盛られていようと、罪は軽い

  私の眼がそれを好み、最初に毒見をするのだから。

 

 

【私の鑑賞】

「痘痕(あばた)も笑窪(えくぼ)」

そんな言葉を思い出す。

詩人は青年と共にいれば気分は王様。その王様につきものの病と言えば、追従。

詩人は悦んでその追従を受け入れる。

心は追従に騙されているようにあるが、最初にそれを受け入れるのはそれを見る眼。

だから心が味わう前に眼が毒見をしてくれているので、追従という美酒を飲む罪も軽減されている。

113番のソネットと並んで眼と心の相克、葛藤を謳っている。