ああ、私のために運命の女神を叱りつけてくれ、
私に邪まな行為をなさしめる罪深い女神を。
彼女が私の暮らしの方便にさせたことは
平俗を助長するだけの生業だった。
そのことで私の名前が得たのは汚名の烙印、
そのことで私の性質もなり下がって
染物屋が手を汚すように自分の仕事で汚れてしまった。
だから私を憐れみ、私の更生を願ってほしい、
患者が進んで薬を飲むように私も飲もう
私の頑なな病を治すための苦い薬を。
どんな苦い薬も苦いと思わず、
罰に罰を重ねて受けようとも二重の苦役と思わずに。
だから、大事な友よ、私を憐れんでほしい。私は確信している、
君が憐れんでくれるだけで私の病がじゅうぶん癒されることを。
【私の鑑賞】
詩人は青年のことを語ることから転じて自分の職業についての言い訳を始めているようだ。
大衆相手の役者、劇作家であることは詩人にとっては恥以外のなにものでもないのであろうか。
当時の役者の社会的地位は浮浪者と変わらぬ扱いであったが、反面貴族の庇護を受けることで身分の保証と得る代わり、貴族の広報媒体としての役目も担っていた。
詩人が青年に自分の境遇を憐れんでほしいと願う反面、それだけで十分だというのは役者、劇作家としての社会的影響力について密かに自信を抱いているともいえる。
ハムレットのことばにもある、「役者とは時代の縮図、生きた年代記だ。死んでから墓碑銘にどんな悪口を書かれるよりも、生きているうちにこの連中に悪い評判を立てられないように気をつけたほうがましだ」(『ハムレット』より、小田島雄志訳)
同情することは、認めることでもある。