シェイクスピアのソネット
 

108 古色蒼然

 

何か書くべきことが頭脳の中にあるというのか

君への忠実な思いが書きつくされていないとでも?

新たに語るべきことや、いま記すべきことが残っていて

私の愛や、君の尊い値打を表現することができるとでも?

 

何もありはしない、愛しい若者ひとよ。けれども祈祷書を唱えるように

私はまったく同じことを毎日繰り返し語らねばならない

言い古したことも構わず、君は私のものであり、私は君のものであると

私が初めて君の立派な名前を神聖なものとして崇めた時のように。

 

そうして新しい愛の器に入った永遠(とわ)の愛は

老年の傷害や土に帰すことをものともせず

必然的にやってくる皺にも屈せず

古色蒼然を永遠の近習とする。

 

  最初に育まれた愛の思いを見つけようとすれば

  歳月と外見がその死んだ姿を見せつけようとする。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は繰り返し、繰り返し青年のことについて語ってきて、今や言いたすこともなく、日々祈祷書の同じ文句を唱えるように、同じことを繰り返し言うだけであるという。

詩人の青年への気持は変わらないように見えるが、歳月の推移とともに青年の容貌の変化がさびしく感じられる。

老境の心情を感じさせる詩―