105 真善美の三位一体

 

私の愛が偶像崇拝であるとか

私の愛する人が偶像であるとか言わないでくれ

私の唄や称賛がどれもこれも似通っていて

一人について、一つ覚えで、相も変わらぬものだからといって。

 

私の愛する人は今日も優しく、明日も優しい

その卓越した美徳は常に変わらない

だから私の詩は彼の変わらぬ優しさゆえに

ひとつのことを語るだけ、あとは無視しているのだ。

 

真、善、美が私の主題のすべて

真、善、美を他の言葉に言い換えて

その言い変えに私の創意工夫は費やされ

三つの主題が一体となって、詩想が広がるのだ。

 

  真、善、美の一つがひとりの人に備わることはあっても

  その三つがひとりの人に備わったことはこれまでになかった。

 

 

【私の鑑賞】

詩人の詩は、いつも一人の青年について、一つのことを謳っている。

だからといってそれを偶像崇拝だとか、青年が偶像のような存在であると思わないでくれと詩人は言う。

青年は、真善美の三つを備えた完全な存在であり、詩人はそのことについて、言葉を変えては称賛し、その表現の変化に創意工夫を重ねる。

真善美のどれか一つを備えた者はこれまでにもいるが、その三つを同時に備えたものは青年以外にはいない、青年こそ、真善美の三位一体となった存在であると称賛する。