9 世界が君を嘆く

 

未亡人の目を涙で濡らすのを恐れてのことか、

君が独身のまま身を費やしてしまうのは。

ああ、君が子どもなしで死んでしまうなら、

世の人は夫に先立たれた妻のように嘆くことになる。

 

世の人は君の未亡人となって、永遠とわに嘆くのだ、

君が君の似姿を残さなかったことで。

世の未亡人は誰しも、子どもの目を見て、

夫の面影を思い浮かべることができるというのに。

 

この世で浪費家がいくら使おうと、

金は場所を変えるだけ、いつでも世間はそれを楽しめる。

ところが、美は浪費すればこの世で終わり、

使わなければ、それは美の破滅となる。

 

  他人を愛する気持がなければ

  そんな恥ずべき殺人を自分自身に犯すことになる。

 

 

【私の鑑賞】

君が独身を通すのは、結婚して妻となる人が未亡人となるのを心配してのことですか。

しかし君は君のものであって君のものではないのです。

君は世界のすべての人のものです。

君が子どもも残さずに亡くなってしまえば、全世界の人が未亡人となって嘆くことになるのです。

金は世間の回りものとはいいますが、君の美しさは、子どもがいなければ伝えることもできず、それで終わりです。

そのような他人を愛する心がないのは、自分の美しさを破滅させる自殺行為にも等しいものです。