8 妙なる楽の音の君よ

 

妙なる楽の音の君よ、君はなぜもの憂げに音楽を聞く?
美しきものは美と争わず、悦びは悦びに歓喜するというのに。
君はどうして嬉しく受け入れられないものを愛し、
うんざりさせるものを歓んで受け入れるのか?

申し分なく調律された音色の正しい旋律が
協和音で結ばれているのに、君の耳に障るとすれば、
それは君を優しく叱ってのこと、君が
ひとりでいて負うべき役を怠っているから。

聞くがいい、一本の弦が、もう一つの弦の優しい夫となり、
互いに調和して鳴り響くのを。
父親と、子どもと、しあわせな母親が、
一体となって、一つの楽しい調べを歌うかのようではないか。

  多くの音色からなっていて、しかも一つに聞こえる無言の歌が、
  君に歌う、「独身のままでは何も残らない」と。

 

【私の鑑賞】
君は美しい音楽、人はそれを心地よく聞くべきもの。
それなのに君はなぜ悲しげに聞くのか?
音楽は皆で楽しんで聞くもの、君はなぜひとりだけ外れて仲間に加わろうとしないのか?
どんなに美しい音を出す楽器も、弦一つでは美しい音色は出せない。
父親がいて、母親がいて、子どもがいて、それが一体となってこそ、美しい調べとなる。
君が独身を続ければ、君の美しさも残らない。