時が精密な細工で刻んだ美しきもの、
すべての人がうっとりと眺める
その美しさに対して時は暴君となり、
何にも優るその美しさを損なう。
時は休みなく進み、夏は
忌まわしい冬に追いやられて破滅する、
樹液は霜で止められ、瑞々しかった葉も散りはて、
美しい景色は一面雪におおわれ、いたるところ荒涼と化す。
夏の花の蒸留液が残されていなければ、
ガラス瓶に閉じ込められた液体の囚人は、
美とともに美の精粋も奪われることとなり、
美も、美の形見も残らないことになる。
花のエキスが蒸留されれば、冬が来ようとも
失うのは外観だけ。その実体は永遠とわに芳かぐわしく生き続ける。
【私の鑑賞】
時は、美を作りもすれば、破壊もします。
夏に燦然と美しく咲き誇る薔薇の花も、冬が来れば枯れ果ててしまいます。
薔薇の蒸留液をとっておけば、その美しさの精粋は残りますが、それが残されていなければ、薔薇の花の実体も失せ、その精粋のバラ水もなく、思い出となる形見もありません。
君の美しさも時がくれば破壊されますが、君の美しさの精粋、すなわち子孫を残していれば、君の美しさは永遠に生き続けることになります。
詩人は君の美しさを薔薇の花にたとえて、その精粋であるバラ水=子孫を残すことを勧めます。