5 時は優しく暴君となり

 

時が精密な細工で刻んだ美しきもの、

すべての人がうっとりと眺める

その美しさに対して時は暴君となり、

何にも優るその美しさを損なう。

 

時は休みなく進み、夏は

忌まわしい冬に追いやられて破滅する、

樹液は霜で止められ、瑞々みずみずしかった葉も散りはて、

美しい景色は一面雪におおわれ、いたるところ荒涼と化す。

 

夏の花の蒸留液が残されていなければ、

ガラス瓶に閉じ込められた液体の囚人は、

美とともに美の精粋も奪われることとなり、

美も、美の形見も残らないことになる。

 

  花のエキスが蒸留されれば、冬が来ようとも

  失うのは外観だけ。その実体は永遠とわかぐわしく生き続ける。

 

 

【私の鑑賞】

時は、美を作りもすれば、破壊もします。

夏に燦然と美しく咲き誇る薔薇の花も、冬が来れば枯れ果ててしまいます。

薔薇の蒸留液をとっておけば、その美しさの精粋は残りますが、それが残されていなければ、薔薇の花の実体も失せ、その精粋のバラ水もなく、思い出となる形見もありません。

君の美しさも時がくれば破壊されますが、君の美しさの精粋、すなわち子孫を残していれば、君の美しさは永遠に生き続けることになります。

詩人は君の美しさを薔薇の花にたとえて、その精粋であるバラ水=子孫を残すことを勧めます。