私の愛する人よ、私が愛するものすべてを奪うがいい、一切合財を。
それで君が以前より何を多く持つことになるというのか?
私の愛する人よ、君はその愛を真の愛と呼ぶことはできない。
前から君はこれより多く持っていたし、私のものすべてが君のものだった。
君が私の愛に乗じて私の恋人を奪っても、
君を非難できないのは、君が私の愛を利用したに過ぎないから。
それでも非難されて然るべきなのは、君が自分を欺いて
君自身が拒んでいたものに触手を伸ばしたことだ。
心優しい盗人よ、私は君の盗みを許す、
君が私の貧しい持ち物からすべて君のために盗んだとしても。
それに愛は分かっている、もっと悲しいのは
憎しみから生じる傷より、愛する人の不当な行為に耐えることだと。
好色で魅惑的な人よ、君の中ではすべての悪行もよく見える、
悪意をもって私を殺すとしても、ふたりは敵同士にはなるまい。
【私の鑑賞】
青年は、詩人がこれまでいくたびも結婚を勧めても聞き入れようとしなかった。
それなのに、よりによって青年は詩人の恋人を奪ってしまった。
だが、青年はそれで何を得たというのか。
私のものすべてが、もともと青年のものであった。
だとすれば、私の恋人も彼のものであった。
だから私は失うものは何もないはずだが、私は青年の不当な行為を耐えなければならないという、そのことだけが悲しい。
しかし、魅惑的な青年のすることは、どんな悪行もよく見える。
だからどんな仕打ちをされようと、二人は決して敵同士にだけはなるまい、と詩人は自戒している。