30 君を思えば悲しみも消える

 

甘い静寂に包まれた心の法廷に

過ぎ去った追憶を召喚しては、

求めて得られなかった多くのことを悲しみ、

昔の悲哀に貴重な時を浪費する新たな悲しみを重ねては嘆く。

 

(ふだん流すことのない)涙に目を溺れさせるのは、

果てのない死の闇に隠れたたいせつな友のため、

はるか昔に清算した恋の悲哀を新たにしては泣き、

消え去った多くのものの損失を悲しむ。

 

過ぎ去った悲しみの数々を嘆き、

重苦しく次から次へと悲しみを数え上げては、

かつて嘆いた哀しみの清算済みの勘定を、

払っていなかったかのように、今また新たに払う。

  だが、親愛なる友よ、君のことを思えば、

  すべての損失は償われ、悲しみも終わるのだ。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は静寂の中で、ひとり心の悲しみに沈んでいる。

詩人は、法廷に呼び出され、過ぎ去った悲しみの数々の審問を受けているかのようである。

とっくの昔に清算済みだと思っていた悲しみに、今また新たに悲しみが甦る。

だが、そんな悲しみも青年のことを思えば、詩人の悲しみの原因もすべて償われ、悲しみも消えていくと詩人は謳っているが、詩人の悲しみはむしろ深まっていくように感じられる。その予兆を感じさせる。