19 時は貪欲であろうとも

 

貪欲なる時よ、ライオンの爪を鈍らせ、

大地におのれの美しい子をむさぼらせよ。

獰猛なトラの顎からその鋭い牙を抜き取り、

長命のフェニックスをおのが血で燃やせ。

 

おまえが過ぎゆく時、喜びと悲しみの季節をなし、

お前の好き勝手にするがいい、足早の時よ、

この広い世界と色褪せてゆくすべての美しきものに対して。

しかし最も憎むべき罪をひとつだけおまえに禁じる、

 

おまえの時間を私の愛する人の美しい額に刻んではならない、

またおまえの古ぼけた筆で彼の額に線を引いてはならない。

おまえが進む道で彼を汚してはならない、

後世の人々に対して美の模範とするために。

  だが、老いた「時」よ、おまえがどんな最悪なことをしようと、

  私の恋人は私の詩の中で永遠に若いまま生きるだろう。

 

 

【私の鑑賞】

「時」は貪欲、すべてを呑み込む。

「時」の手からは、なにものも逃れることはできない。

時の流れの中で、人々は過ぎゆく季節を楽しみ、惜しむ。

しかし、「時」よ、彼にはおまえの手をつけてはならない。

彼を永遠の美の模範として残しておくために。

それでも、「時」よ、おまえが彼に手をつけるというのなら、それもよかろう。

しかし、彼は私の詩の中で永遠の若さを保つだろう。