15 人の命は儚 (はかな) くとも

 

成長するすべてのものの花の盛りは

ほんのわずかな間のことでしかなく、

この巨大な舞台が示すのはほかでもない

舞台の出来をひそかに左右する星の意見だと知る。

 

人間は植物が成長するように

同じ一つの天に励まされもすれば抑えられもし、

若い樹液を誇ったかと思えば、その絶頂から衰え始め、

華やかな状態も忘れ去られることに気づく。

 

この移ろいやすい世界を思えば、

若さの盛りの君を目の前にしても、

破壊的な時が、衰退と相争って、

君の青春の盛りを汚(けが)れた夜に変えるのが見える。

 

  君への愛ゆえに、力をつくして時と戦い、

  時が君から命を奪うとも、私は君に新たな命を接ぎ木する。

 

 

【私の鑑賞】

「世界は舞台」という考えは、シェイクスピアの専売特許ではなく、ルネサンス時代の共通した見方でした。

星の意見とは、舞台を見つめる観衆(聴衆)の評価にほかなりません。

ここにも舞台人のシェイクスピアが見えます。

詩人は植物の成長に人生を重ね、その花盛りから衰退が始まっているのを見ます。

時の破壊する力は避けがたく、詩人は若さの絶頂にある青年に衰退を思わざるを得ません。

詩人は、詩に書き留める(接ぎ木する)ことで破壊的な時の力と争い、青年に新たな命を甦らせようとします。

ここで詩人は、青年の美を伝えるのは青年の子どもではなく、詩人の詩であることを表明します。