成長するすべてのものの花の盛りは
ほんのわずかな間のことでしかなく、
この巨大な舞台が示すのはほかでもない
舞台の出来をひそかに左右する星の意見だと知る。
人間は植物が成長するように
同じ一つの天に励まされもすれば抑えられもし、
若い樹液を誇ったかと思えば、その絶頂から衰え始め、
華やかな状態も忘れ去られることに気づく。
この移ろいやすい世界を思えば、
若さの盛りの君を目の前にしても、
破壊的な時が、衰退と相争って、
君の青春の盛りを汚(けが)れた夜に変えるのが見える。
君への愛ゆえに、力をつくして時と戦い、
時が君から命を奪うとも、私は君に新たな命を接ぎ木する。
【私の鑑賞】
「世界は舞台」という考えは、シェイクスピアの専売特許ではなく、ルネサンス時代の共通した見方でした。
星の意見とは、舞台を見つめる観衆(聴衆)の評価にほかなりません。
ここにも舞台人のシェイクスピアが見えます。
詩人は植物の成長に人生を重ね、その花盛りから衰退が始まっているのを見ます。
時の破壊する力は避けがたく、詩人は若さの絶頂にある青年に衰退を思わざるを得ません。
詩人は、詩に書き留める(接ぎ木する)ことで破壊的な時の力と争い、青年に新たな命を甦らせようとします。
ここで詩人は、青年の美を伝えるのは青年の子どもではなく、詩人の詩であることを表明します。