10 私のために心を改めてくれ

 

恥知らずにも誰かを愛しているなどというのはやめたまえ、

自分自身に対してさえ先を見る目がないというのに。

君が多くの人から愛されていると言うのならそれもいい、

しかし君が誰も愛していないことははっきりしている。

 

君はそのように殺人的な憎悪にとりつかれ、

ためらいもせず自分自身に背く企みを謀り、

その美しい家屋を破壊しようとするが、

君がまず望むべきことは保存することなのに。

 

君の考えを変えてくれ、そうすれば私も心を改めよう。

やさしい愛より憎しみが宿る方がりっぱだというのか?

君の外見のように、優しく親切であってくれ、

でなくば、少なくとも君自身には親切な心を見せてくれ。

 

  私の愛に答えて、もう一人の君をこしらえてくれ、

  君の子孫や、君自身の中で、美が永遠に生きるように。

 

 

【私の鑑賞】

9番のソネットに続いて、青年に他人を愛する気持ちがないと詰問する。

君が誰かを愛しているなどというのは嘘だ。

そんな嘘は言って欲しくない。

多くの人から君が愛されているのは確かなことだと認めよう。

だが君は自分だけしか愛していない。

その証拠に君は自分に優しくしないということで、君自身を裏切っているではないか。

誰かを愛しているといのなら、私の愛に答えて、君の考えを改めて、君の美しさを伝えるために、君の子どもを残してほしいのだ。