恥知らずにも誰かを愛しているなどというのはやめたまえ、
自分自身に対してさえ先を見る目がないというのに。
君が多くの人から愛されていると言うのならそれもいい、
しかし君が誰も愛していないことははっきりしている。
君はそのように殺人的な憎悪にとりつかれ、
ためらいもせず自分自身に背く企みを謀り、
その美しい家屋を破壊しようとするが、
君がまず望むべきことは保存することなのに。
君の考えを変えてくれ、そうすれば私も心を改めよう。
やさしい愛より憎しみが宿る方がりっぱだというのか?
君の外見のように、優しく親切であってくれ、
でなくば、少なくとも君自身には親切な心を見せてくれ。
私の愛に答えて、もう一人の君をこしらえてくれ、
君の子孫や、君自身の中で、美が永遠に生きるように。
【私の鑑賞】
9番のソネットに続いて、青年に他人を愛する気持ちがないと詰問する。
君が誰かを愛しているなどというのは嘘だ。
そんな嘘は言って欲しくない。
多くの人から君が愛されているのは確かなことだと認めよう。
だが君は自分だけしか愛していない。
その証拠に君は自分に優しくしないということで、君自身を裏切っているではないか。
誰かを愛しているといのなら、私の愛に答えて、君の考えを改めて、君の美しさを伝えるために、君の子どもを残してほしいのだ。