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韻律の不完全な詩が完全を求めるように、

谷間の低いところで生まれた泥だらけの僕の詩も、

僕の愛情と心情を乗せて、

君のいるパルナッソス注:1へと飛んで行く。

君はそこからロンドンを見下ろしている。僕は

長いことここロンドンにいて見下ろされてきた。

今や快楽の飢饉が僕らの都市を襲っている。

劇場はどこも空っぽで空席でいっぱいだ。注:2

本通りも裏通りも人通りがなくやせ細り、

まるで昨日お産した女のようである。 

僕の憂鬱を晴らすものはここには何一つない。

あるのはただ熊いじめと裁判だけだ。

だから僕はここを出て、田舎に行って、

ロンドンから逃げ出した快楽を取り戻そう。

君もそうしたまえ。蜜蜂のように

腿に蜜を溜めこむのではなく、

ロシア商人のように、君の船に荷を満載し、

冬になればここに戻って手広く商いをするのだ。

サフォークの快楽で僕らを喜ばせてくれ。あそこ注:3

君の庭であるように、ここ注:4を君の巣箱、蔵とするのだ。

 

【訳注】

E. G. はサフォーク州出身の詩人エヴェラード・ギルピン(Everard Guilpin)。1590年代初めにグレイズ・インに在籍し、一時ロンドンの北にあるハイゲイトに住んでいた。この詩は1899年、Gosseによって初めて出版された。

注:1 パルナッソスはミューズが愛した山であるが、ここではギルピンが住んでいるハイゲイトを指す。

注:2 81593年、疫病の流行で劇場が封鎖されたことへの言及。

注:3 「あそこ」はサフォーク

注:4 「ここ」はハイゲイト。

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 書簡詩