あなたは彼女でありあなたでもあるので、二重の意味で彼女です、
彼女の死に顔に、あなたご自身の半分を見ます。
彼女はもうひとりのあなたであり、ふたりが
友情を築くことで、二人は一人となるのです。
それで、二人の間には第三者の入る余地はなく、
それは二人が生まれる以前から、そうなる運命でした。
双子は、生まれたところがクスコ(注:1)とモスクワほど離れていても、
異なる星が一つの星座(注:2)となり、
二つの目が一対となって同じ動きをするように、
二人は同じものを見ようとし、同じ道を進みます。
あなたが先に亡くなっておれば、彼女は亡骸(なきがら)であり、
彼女の顔にあなたの立派な墓を見ていたことでしょう。
彼女は魂のように去っていき、ここに留まっているあなたは、
生きた友人ではなく、土塊の方割れです。
あなたがその役を務められることで、亡骸という部分しかないのに、
「ここに王様が眠っておられる」と言って、
王様の全体に捧げるべき名誉と敬意を、人々が捧げるように、
私たちもすべての尊敬をあなたに捧げるのです。
というのも、友情は、以前は二人ですべてであったあなたが、
今はあなたひとりですべてということで、
彼女の死によって一部が失われて全部ではなくなったのではなく、
あなたの中にすべてが凝縮されたものとして崇めるのです。
万物のうち、多くのものが朽ち果てますが、
それらを構成している純粋な元素は残ります。
たとえ分散して、無限に拡散されようとも、
再び集約され、統合され一体となります。
ですから、奥方様、彼女の魂は天国に行き、
彼女の肉体は大地を寝床にして休むように、
彼女の美徳も、本来の天球に行くように、
元の場所である、あなたの処へと帰って行きます。
完全な運動が円を描くように(注:3)、
彼女の美徳も、小さな川の母である海、あなたの元へと戻って行くのです。
彼女はすべての香料であり、あなたはすべての黄金でした。それで、
私たちは、あなた方二人の中に豊かな東西のインドを見たのです。
炎も、錆びも、一片の黄金さえ消耗することなく、
最初のままの形を持続し、
水や、土、塩、空気にさらされ、
どれだけ引き伸ばされても、損なわれることはないのです。
同じように、あなたに何か加えることができても、
何物もあなたを損なえず、変えることもできません。
彼女に匹敵するような新しい友人を求めることや、
彼女なしでもやっていける、という疑いを抱かすようなことはせず、
信頼のおける書物を彼女の代わりとして下さい。
しかし、彼女に匹敵する本はユディト(注:4)のほかにはないでしょう。
【訳注】
この詩はベッドフォード伯爵夫人の近親者で、1609年の夏に、トィックナムの夫人の家で相次いで亡くなった二人の婦人のうち、セシリア・ブルストロードないしはマーカム夫人のことを謳っているといわれる。稿本によっては、『エレジー』の作品群に、別の稿本では『書簡詩』の中に入れられ、1633年の詩集では、『ベッドフォード夫人へのエレジー』と題されていた。
注:1 クスコは、ペルー南部の都市で、12-16世紀のインカ帝国の首都。
注:2 一つの星座とは、双子座。
注:3 円は永遠の表象であり、神の象徴でもある。完全な運動は円を描いて、出発点に戻る。
注:4 ユディトは旧約聖書外典の『ユディト記』に登場する女性で、イスラエルをアッシリアの将軍ホロフェルニスの攻撃から救った女性で、亡くなった夫に対して貞節を守り続けた美しい未亡人。マーカム夫人も未亡人であった。
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