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君の学問に対する尊敬すべき渇望は

いまだ満足していないのか。君の豊かな脳髄は

学問の心霊と精髄から引き出した

蜜でいっぱいになっていないのか。

いい加減に乳離れして、君の乳母である

ケンブリッジから去り、他の人のように、

ここで我が国の市民法の膨大な書籍を

しっかり咀嚼し、不屈の精神で消化するのだ。

そしてすぐに始めたまえ、僕と同じ嘆きを君が繰り返さないように。

その嘆きとは、僕の青春の夜明けに

始めるべきことを、今頃になってやらねばならないことだ。

それで僕は、浅はかな旅人がするように、

終日道に迷ったり、居眠りしたりしては、

光も力も消え失せ、暗くなって疲れ果ててから、急いで馬を走らせるのだ。

 

君がもしミューズと結婚しているのなら、

いつまでも抱きしめていて、詩を書き続けることだ。

奇妙な不貞を働いて君を誘い、

彼女を未亡人にしようと企む僕から離れているがいい。

僕のミューズは(僕にも一人いた)、僕が冷たくしたので、

自分から離婚してしまった。その原因は僕にあるので、

新しいミューズと重婚することができないし、

その意志もなければ能力もない。

そういうわけで、これらの詩には

母親がいないし、中身もなく、あるのは

父親が与えたほんのわずかな形だけだ。

それらは低俗で、不完全なので、

君が詩として認め、折紙を付けてくれない限りは

とうてい詩とは呼べない代物だ。

 

【訳注】

B.B氏が誰であるか不明で、諸説ある。一つはR.C. Baldが考えたボプレ・ベルである。彼は1591年にケンブリッジを卒業し、1591年にリンカンズ・インに入っている。ダンとベルは互いに知った仲であったが、二人の関係を示すものはこの詩以外にはない。B.B氏がベルである場合、彼がリンカンズ・インに入る前、1594年5月に書かれたものと思われる。今一人の候補は、バジル・ブルック(クリストファーとサムエル兄弟のブルックとは関係ない)であるが、詳細は不明である。B.B.氏がベルとすれば、1行目の「学問への尊敬すべき渇望」とは、ベルがケンブリッジで文学士の称号を得てなおかつ先へ進み、修士号の資格を取ることを指している。

この詩は、一つにまとめられているが、二つのソネットからなると考えられている。 

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 書簡詩