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名誉とは完全に昇華され、注:1

精製された純粋物です。神様がお一人のとき、

被造物はなく、神様に名誉はありませんでした。

 

しかし、四元素注:2のうち、私たちが足下に踏みつけている元素は、

私たちを楽しませ、食べさせてくれるすべてのものを産みますが、

私たちの頭上にある注:3二つの元素が何も産み出すことがないように、

 

すべての名誉も、身分の低い者から産まれます。

王様たちは、名誉を授けようとする人たちを示しますが、

ただ私たちを導くだけで、名誉を与えることはしません。

 

薬草から蒸留によって不純物を取り除き、

純粋物を取り出すには、火や太陽よりも、

人が蔑む糞の方が、効果があります。

 

ですから、奥方様、あなたの称賛者の身分が低いことを気にしないで下さい。

労働者たちの民謡に、神様は、しばしば、

「テ・デウム」注:4 の調べより敬虔なものを見て下さいます。

 

遥か離れた塔に据えられた大砲の音は、

シチリアの地下から噴き出される火注:5に較べれば、

遠くまで届かないし、長くは続きません。

 

私が今よりもっと暗い所に住んでいたとしても、

あなたの光は、どんな黒雲も吹き払うことができます。

一つ注:6を除けば、それはあなたを観ておられる至上の光です。

 

神様は、あなたの肉体のために、より優れた土を造られたか、

長く朽ちることのない魂の材料を用いられたか、

最後の日まで変化をほとんど必要としないものを用いられた。

 

この材料は、蜜蜂を包む琥珀のように、

あなたの生きた魂を包み隠し、かつ見せます。それで、私たちは

あなたの透明な額に、あなたの心の思いを見ることができます。

あなたは教えて下さいます(私たちは学ぼうとしませんが)、

その石を用いれば、内にあるすべてのものが外側に写し出されます。

 

かつてそのような神殿注:7が造られたことがありますが、あなたもそのような存在です。

実態と外観は、あなたにとって等しく重要であり、

美徳は、知識と行動を兼ね備えて、はじめて完全なものとなります。

 

私たちの成長を司る魂と感覚を司る魂は、

理性を司る魂に対して長子権を持っていますが、注:8

理性から逃げ出すこともせず、優先権を主張することもありません。

 

同じように、自然の最初の教訓である分別は、

情熱に場所を与えるのを惜しんではいけないし、自分の場所を捨てて、

自らを追放することも、宗教を捨てることもいけません。

 

分別とは賢者の魂であり、同じように

宗教はキリスト教徒の魂です。ご存知のように

この二つは一つであり、一方が肯定するものを、他方が否定してはなりません。

 

私たちはこの二つを固く結びつけ、一緒にしようとして

壊すようなことがあってはなりません。また、知識を

宗教の同僚に考えてはなりません。宗教はそれそのものです。

 

神様を表わすあの貧しい象徴(丸い円)は、

宗教の象徴でもありますが、その中には分割できない中心が、

すべての線となって、あらゆる方向に流れ出ています。

これまでに、あなたのなかでどちらか一方が単独で働くか、

主要な働きをしたとすれば、宗教こそ

あなたの目的であり、分別はあなたにとって手段です。

 

あなたが来られたその道を、これからも進んで下さい。

変化を望むのは、むやみに欲しがる人か、後悔する人です。

あなたはそのどちらでもありません。高貴で、罪のないお方です。

 

 

【訳注】

注:1 「完全に昇華され、精製された純粋物」は、錬金術の用語を用いた表現。

注:2 「四元素」とは、土、水、火、空気で、「足下に踏みつけている元素」とは、水と土。

注:3 「頭上にある二つの元素」は、火と空気。

注:4 「テ・デウム」は神を賛美する歌。

注:5 「シチリアの地下から噴き出される火」は、エトナ山の噴火の火。

注:6 「一つを除けば」の一つは、神のこと。

注:7 ローマ皇帝ネロは、透明石を用いた完全に透明な神殿を造ったといわれている。

注:8 アリストテレスの形而上学では、植物には、成長の魂、動物には感覚の魂、人間には理性の魂という三つの魂があり、植物的魂と感覚的魂は幼児期に生じ、その後理性的魂が備わっても二つは留まったままであるが、理性的魂を支配することはないという。

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 書簡詩