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ようこそ、敬愛する詩人よ。ふんだんに強い炎を

誰よりも多く胸に秘めた人よ、

僕は自然が君に授けたものを愛したが、君の

智と技の長所は愛すというより驚くばかりだ。

君の前に書いた人も、君の後から書く人も、

その作品が、どんなに苦労して書かれても、

君のたくましさに較べれば、赤子か年寄りのようなもの、また、

真昼の明るさに較べれば、明け方や夕暮れ時の薄明に過ぎない。

 

人々がよく言うことであるが、

憐れみを受けるよりは妬まれる方がましだ。だから僕は、

君が最高であることを願いながらも、君を妬むことにする。

同じ理由で、君が僕を憐れんでくれたらと願っている。

いや、僕のことなど構わないでくれ。かつて僕が

自然の女神と運命の女神の恵みを受けていたとき、(ああ、

ミューズの学校で得た君の才能の前では)

怪物か、乞食でしかなかったが、今では道化だ。

 

ああ、嘆かわしいことには、最近生まれた謙遜とやらが

いとも容易くとろける心臓に根を張って、

傲慢の誹りの疑いなしには、

自分の長所を褒めることもできない始末。

だが、君自身を別にすればどんな主題も、

君の筆に値しないだけでなく、君以外のどんな筆も

君の価値を喧伝することができない。君を称賛する詩が

君自身によって書かれたら、どんなに素晴らしいことか。

 

この唄が韻文としてどんなに粗雑であっても、

下手な画家が神様を描けば立派な悪魔となるように、

詩としてはまずくても、散文としては読めるだろう、

君が読む時、韻律のことを忘れてくれさえすれば。

そういう次第で、書いてくれ。そうすれば僕も後に続いて、

君の負債者、君の木霊、君の引き立て役、君の道化役となろう。

君のような詩を作れば、君の猿真似であっても、

世界の獅子と思われるだろう。

 

 

【訳注】

T. W. 氏は、ローランド・ウッドワードの弟であるが、それ以上のことは知られていない。

 

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ジョン・ダン全詩集訳 書簡詩