エレジー6 (背教者) ジョン・ダンの部屋トップへ戻る

 

ああ、名誉という煙を吸っては太って飢える

そのような者のように、僕を仕えさせないでくれ。

彼らはお偉方の言葉や顔色を窺うのに哀れにも忙しい。

君の愛の書物に偶像崇拝の追従者たちがするように

僕の名前を書き込まないでくれ。彼らは

王様の称号に多くの肩書を添えるが

貢物が来るわけでもなく、支配権もない。

僕は実のある奉仕をするので、

虚名を憎む。ああ、だから僕を

常任の恋人にしてくれ、でなければ恋人にはならない。

僕の魂が肉体の鞘に納まっていて、

まだ誓約で縛られてもなく、口づけで

不実な君を、僕の煉獄に吸い込んでもいなかった頃、

君の心は蝋のようであったし、君の操は鋼のようであった。

ところが、川面に散る軽率な花びらは、

逆巻く渦に吸い込まれ、口づけされ、抱擁されて、

溺れてしまう。また、蝋燭の光輝く眼が

なまめかしくキラキラと輝き、眼の眩んだ蛾を招き寄せ、

その羽根を焼き焦がす。悪魔というものは

すっかり自分のものにしてしまうと、めったに訪れもしない。

川の流れを見つめれば、その源から

おぼつかない旋律のささやきの音で、

声もなく眠っているように、静かに

川底の胸に抱かれて流れていくが、やがて、猛り狂って

その眉をひそめ、小枝が垂れ下がって

その額に口づけしようとすると、大きくうねってはねのける。

ところが、何度となく齧りつかんばかりの口づけで

首尾よく土手を裏切らせて口を開けさせ、入り込むと、

どっとばかりに流れ込み、

故郷や、長い間共にしてきた川筋を捨て、

荒れ狂い、いばりちらしては、慇懃無礼に、

戻っていくことを約束しては喜ばせ、

からかうものだから、川床は涸れてしまう。

そこで僕は言う。彼女が川で、僕が川床であると。

だが、君の過酷さで僕に

投げやりな絶望を起こさせないでくれ。そうなると僕の心は

研ぎ澄まされて君を嘲笑うことになる。ああ、苦しみに萎えた愛は

軽蔑ほど賢くもなく、十分な武装もしていなかった。

これからは違った眼で君を見つめ、

君の頬には死を、君の眼には闇を見るだろう。

希望は信頼と愛を生むというが、このような教えを受ければ、

諸国がローマから離反したように、僕も君の愛から離れるだろう。

僕の憎しみは君の憎しみに勝り、きっぱりと

君の戯れの恋を拒否する。   

決意を持って背教者となれば、

破門されることなど怖くない。

 

 

【注釈】

この詩には本来タイトルが付けられていなかったが、「背教者」という題名は、ヘレン・ガードナーが付けたものである。

 

 

 
 
   
ジョン・ダン全詩集訳 エレジー