エレジー 1 嫉 妬  ジョン・ダンの部屋トップへ戻る

 

愚かな女だ、夫が死ねばよいと願いながらも、

夫の嫉妬深さに文句を言っている。

毒で膨れあがった夫は臨終の床につき、

その身体は瘡蓋に覆われ、

荒く、短い息をつく、それはまるで、

軽快な四分音符を演奏する音楽士のようであり、

今にもむかつく嘔吐で、

彼の魂を一つの地獄から新しい地獄へと送り出そうとしている。

彼の貧しい親族たちの嘆きの声も耳には届かない。

彼らは空涙を流しては莫大な遺産をねだるが、

おまえは泣きもせず、喜び、浮かれる。

明日になれば自由になれる奴隷のように。

だが、彼を死に至らしめた心の苦しみである嫉妬の毒を、

飢えたように呑みこむのを見て、おまえは涙を流す。

ああ、彼に感謝せよ、彼は思いやりがあるので、

僕らを疑って親切に警告をしてくれた。

僕らは以前のように、馬鹿にしたような謎の言葉で、

彼の醜さを大っぴらに軽蔑するのはよそう。

食卓で席を共にする時にも、

言葉や、触れ合うことで、みだらな素振りをするのをやめよう。

彼が御馳走をたらふく食って腹を膨らませて、

籐椅子に座って動きもとれず、鼾をかいている時にも、

彼の寝床を二度と奪う真似はすまい。

また、以前のように、彼の家で接吻したり、戯れるのもやめよう。

今こそ、多くの危険が見える。ここは

彼の領土、彼の城、彼の教区なのだ。

だが、邪まな者たちが、

亡命してよその国に行き、そこで王様の悪口を言ったり、

贋金を鋳造したりしようとするように、

30僕らも他の家でやれば、何も恐れることもない。

そこでなら僕らは彼の家庭の方針、

彼の愚かな策略、金で雇ったスパイを嘲笑うことができる。

テムズ河の南岸の住人たちが

ロンドン市長を笑ったり、ドイツ人が法皇の傲慢を嘲笑うように。

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ジョン・ダン全詩集訳 エレジー