劇団鳥獣戯画 第104回公演 
   キャバレーボードヴィルショー 『ベニスの商人』
            No. 2024-021

 2016年5月の鳥獣戯画第89回公演でも同じタイトルで上演されているが、再演というより新たな作品として見てもよいと思う。というのは今まさに、イスラエルのガザ侵攻でパレスチナの子供を含む一般の人々が被害に曝されているという現実を前にして、この劇も自ずからその影響を受け、結末にはそのことを訴えているからでもある。
 とはいうものの、内容や基本的な構成そのものは前回とほとんど変わっておらず、今回も前回同様に日替わりで開演前のミニショーが演じられ、この日の昼の部は歌姫京本幸子の歌で始まり、劇中でも、彼女は小林幸子を彷彿させる衣装姿と歌で目と耳を楽しませてくれた。京本幸子は、劇中ではベアラーリオ博士を演じてイスラエルの建国の歴史などの説明役をも務める。
 キャバレー「ベネチア」で芸人たちが『ベニスの商人』を上演している最中で、劇の進行中にボードヴィルショーとしてのさまざまな曲芸や歌と踊りが演じられという趣向で、出演者がそれぞれの特技をいかした芸を披露するのを見るのも楽しみの一つなっている。
 今回その中でも特に注目したのは、ポーシャを演じるユニコのコントーション・ティシュー・ダンス。コントーションは文字通り体を自由自在に曲線的にねじる所作で、軟体動物を思わせた。ただただ驚いて見るだけであった。
 新体操あり、組み体操あり、ポールダンスありと、曲芸ありと、見るものをして飽かせない。そして、観客を参加させての手拍子の練習、果ては観客を舞台にあげて観客と一体となって手拍子をしながら踊る。舞台に上がった観客は予め予定されていたかのように舞台上でものおじすることなく見事にこなしていたのも印象的であった。
 舞台の進行は、劇場支配人役でMC1のちねんまさふみ、MC2の竹内くみこ、MC3の清田里美ら三人によって進められる。
登場人物は、ナイフ使いの名人が演じるシャイロックには石丸有里子、アントーニオを演じる歌い手に一見直樹、バッサーニオを演じるダンサーに川原井黄杏、ロレンゾーを演じるコメディタップダンサーに樋口春香、その恋人役のジェシカを演じるポールダンサーに淺野裕美子などなど、キャバレー「ベネチア」での役割をもっての役柄で、その特技を披露する総勢19名の出演である。出演者は前回と一部変っているが、劇の内容そのものについては基本的には変っていないので、内容そのものを記すのは省略。
 上演時間は、1時間30分。途中色々な芸を楽しませてもらうせいか、体感的には長く感じたが、劇団鳥獣戯画ならではの楽しみを味あわせてもらった。

 

脚本・演出・振付け/知念正文、音楽/雨宮賢明、舞台美術/佐々波雅子
6月5日(水)14時開演、新宿・Theater Brats、
チケット:(A席)5000円(ワンドリンク付き)、座席:A4


>> 目次へ