高木登 観劇日記2012年 トップページへ
 
  関東学院大学シェイクスピア英語劇第61回公演 『から騒ぎ』      No. 2012-027
 

アンケートに答える形で最初に総合評価を言えば、最高点の「とても良かった」には不足だが、平均点以上の「良かった」である(アンケートに答える形であるので、個人的な感想としての評価と思っていただきたい)。

非常に良かった点をあげれば、ドン・ペドロを演じたYuki Masuda君の演技と台詞の表現力が抜群であった。堂々とした演技で見る者を引きつけるだけの力を持っていた。

台詞のうまさではベネディックを演じたShogo Yamada君とその相手役のベアトリスを演じたMirai Hiyoshiさん。惜しむらくは、この二人の丁々発止の台詞のやりとりの熱気、面白さがいまひとつ伝わってこないことであった。

ベネディックを演じるYamada君が、自分のうまさに自己陶酔に陥っているかのようで、台詞の間合いが緩み、舞台の空気を冷ましている面があったように思えたのがその原因の一つともいえる。

演技の表現力で優れていたのは、ドグベリーを演じたWataru Abe君。しかしながら、彼もヴァージスや、夜警、コンラッド、ボラキオなどとの会話においては物足りなさを感じた。これは彼の台詞の表現力だけの問題というより、受ける側との関係にも起因している。

演出面では工夫すべき点がいくつかあったように思う。

一つは、ベネディックとベアトリスがそれぞれ盗み聞きする場面で、身を隠す小道具にもう少し工夫が欲しかった。

この場面は、工夫次第で舞台の盛り上がりもずいぶん変わってくると思う。その点では、今年来日して同じ『から騒ぎ』を上演したオックスフォード大学のこの場面の演出は特筆すべきものがあった。(ホームペイジ「あーでんの森散歩道」観劇日記、No. 2012-015参照)

いま一つは、深夜にボラキオがマーガレットと逢い引きをしている場面を、ドン・ペドロとクローディオに見せる場面を作り出し、実際に舞台上で可視化しているが、それが取って付けたようで、むしろなかった方がよかった。

この場面は実際にはボラキオがコンラッドに説明する台詞の中で出当てくるだけであり、むしろ想像力を働かせる演出の方が良かったと思う。この場面を舞台上で演じさせるなら、その表現をもっと工夫する必要がある。

衣裳の点では、夜警たちが貴族のお仕着せの衣裳のような立派なものであり過ぎ、衣裳につられたわけでもないだろうが演技が少し立派過ぎ、夜警たちのずっこけた崩れた様子が乏しく面白みに欠けた。

クローディオを演じたDaiki Kamoshida君は演技と台詞にひ弱さを感じたのだが、そのひ弱さで思わぬことに気付かされた。それは彼が騙されやすく、信じ込みやすいということ。その発見は、ドン・ペドロの弟であるドン・ジョンから最初に騙される場面で気付かされた。ドン・ペドロがクローディオの代わりにヒアローを口説いて結婚を申し込む役をするということを承知していながら、ドン・ジョンにころりと騙される。クローディオがひ弱に見えるだけに、それだけ信じやすく騙されやすいのだと感じさせた。

関東学院大学の英語劇を見ていつも感じる喜びは、最後のフィナーレで裏方の学生さんたちも全員揃って歌や踊りに参加し、見ている私たちまでも気分が高揚させられ、一体感を味わうことができることである。

今年のメンバーにもまた会えることを期待して、来年も楽しみにしています。

 

(Director/ Hiroki Tanaka、12月1日(土)昼の部、神奈川県民共済みらいホール、
最前列中央の席にて観劇)

 

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