高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
    グローブ座カンパニー公演 『夏の夜の夢』            No. 1999-002
白背景10

 東京グローブ座10周年記念の企画として、92年初演、93年再演されたグローブ座カンパニーによる『夏の夜の夢』が再演第1希望としてこのたび再演されることになった。
 出演のメンバーを見ただけでわくわくするようなシェイクスピア大好き俳優、それも一癖も二癖もありそうな役者が勢ぞろい。
 一口で言えば、「俺が、俺が!」の剛の者の集まりで、そのぶつかり合いもまた楽しみの一つであった。
 夏祭りの櫓舞台よろしく、舞台中央に大きく組まれ、その上には木製の湯浴み桶。
 開演とともに登場人物が黒いフードとマントで全身を覆って、櫓舞台の前に5本の蝋燭の灯を中心にして集まる。
 この劇の終わりにもこのことが繰り返され、円環状となっている。
 パックの締めの「われら役者は影法師」の台詞はかすかに聞こえるささやき声で、劇の始まりと終わりの場面で語られる。
 『夏の夜の夢』は夢の祭り、あるいは祭りの夢。
ならば祭りは祭りらしく楽しもう。夢ならば覚めるまでその夢を楽しもう。
ストルマーレの『夏の夜の夢』はそういう楽しみを提供してくれ、われわれを現実の世界から異界へと導く。
 何でもありのごった煮の世界。
 衣裳も和服在り、洋服在り、メイクも歌舞伎調の隈取ありで、非現世的である。
 上杉祥三のパックはアドリブだらけで、若い世代にはこれが受けているようでみな笑って見ていたが、自分には多少苦々しく感じないでもなかった。
 ピーター・ミルワードの『シェイクスピアと日本人』によれば日本でシェイクスピア演劇の人気作品第一にこの『夏の夜の夢』があげられているが、それに違わず楽しく観劇した。

(演出/ピーター・ストルマーレ、1999年1月10日(日)14時開演、
東京グローブ座にて観劇。 チケット:(A席)6000円、座席:1階D列15番)

 

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