高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   幹の会 『十二夜』                       No. 1998-006
白背景10

 ヴァイオラの麻乃佳世は、男役のシザーリオを、女としての男の型をしっかりきめていた。
 特に、ヴァイオラが兄セバスチャンと出会って互いに確かめ合う時の麻乃佳世の目の輝きが潤みを帯び、互いに遭難したと思っていたのが生きて奇跡的に再会できた悦びの涙が星のように光っていたのが強く印象に残った。
 そんなヴァイオラに、僕はオリヴィアのように一目惚れした。
 松橋登のオーシーノ公爵の恋ゆえの憂鬱な姿もうまいと思った。これまで観てきたなかでは、マイケル・ベニント演出の『十二夜』でオーシーノ公爵を演じた俳優座の村上博の演技が一番印象に残っているが、それに勝るとも劣らないと思った。
 サー・アンドルーを演じる高橋耕次郎は、アホでお人よしさがよく出ていたし、サー・トービーの佐古正人もサー・アンドルーのボケに対してのツッコミ役としてノリに乗って、サービス精神旺盛であった。
 マルヴォーリオ役では、これまで観てきたなかでは、廃油座公演の中野誠也と劇団昴公演の金子由之が印象に残っていて、二枚目の平幹がどのようなマルヴォーリオを演じるか興味があったが、チャップリンのようなメイキャップの顔ごしらえで二枚目ぶりをうまく覆って、悲喜劇的喜劇性をうまく演じていた。
 特に目の表情でうまく演じていて、なかなか役にはまっていたと思う。
 欲を言えば、平幹の持っている端正さがうまさを平板にしているように思えたことだが、それはとりもなおさず、自分が抱いている平幹への先入観のせいかもしれない。

 

(訳/小田島雄志、演出/鵜山仁、1998年2月28日(土)17時開演、紀伊国屋サザンシアターにて観劇。
チケット:7000円、座席:12列4番)

 

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