高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
   神田伊織連続講談会、文芸作品シリーズ
   『グスコーブドリの伝記』&『レ・ミゼラブル』より『ファンチーヌの転落』
No. 2025-003

 1月の日本橋社会教育会館ホールでの新春神田伊織連続講談会に続いて今年2回目の連続講談会は文芸シリーズとして、宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』と、『レ・ミゼラブル』第2話『ファンチーヌの転落』が語られた。
 神田伊織の講談会ではマエセツにあたる「マクラ」が面白いだけでなく、その蘊蓄の深さから学ぶことも多い。
 宮沢賢治については、彼の造語力の豊富さと人物等のネーミングやオノマトペの多用のユニークさについて語られた。
 『グスコーブドリの伝記』の主人公グスコーブドリは、グスコーが姓でブドリが名前であることの説明に始まって、登場人物の一人オリザという名前はラテン語で「米」、「稲」という意味で、劇作家の平田オリザは、父親が食い外れが無いようにと願いを込めて名付けられたということや、オノマトペでは賢治の「のんのん」という特異な擬声語は、大正の講談師に「のんのん講談師」と呼ばれた田辺南龍という講談師がいて、そのことから伊織は、宮沢賢治は講談が好きだったのではないかという自説を述べ、興味深い推察だと思った。
 中入り後の『レ・ミゼラブル』では、伊織自身は第2話を語る積りでいたのだが、会場の責任者から第1話が聴きたいという要望が入り、観客のアンケートで決めることになったが半々の結果となり、結局、第1話の概要を語って第2話を語ることになった。
 僕自身としては、第1話は二度ほど聞いたことがあるので、第2話を聞きたいと思っていたのでよかった。
 この『レ・ミゼラブル』は、伊織が新大塚の仏文学者の鈴木信太郎記念館で年3回ほど語る予定で続けられていて、第1話は『ジャン・バルジャンの改心』、第2話は最近鈴木信太郎記念館で『ファンチーヌの転落』として語っており、4,5年かけて全部を語ることになっているという。
 第2話は、改心したジャン・バルジャンが今はマドレーヌと名を改め、黒玉の加工工場の工場長となり大金持ちとなっていて、荷馬車の下敷きになった老人を助け出したことから市長にまでなっている。
 第2話のヒロインであるファンチーヌは3歳の娘を宿屋の夫婦に預け、マドレーヌの工場で働いていたが、秘密にしていた子どもがいることが知られ会社を解雇される。
 娘の養育費を仕送りするため、職を失った彼女はついには娼婦にまで身を持ち崩す。
 そんなときに出会ったのが今は市長となっているマドレーヌことジャン・バルジャンである。彼の善意でファンチーヌは娘を引き取って一緒に暮らすことが出来るようになることを予期させるところまでが第2話で、娘の名前である「コゼット」はまだ明らかにされない。
 ジャン・バルジャンが荷馬車の下敷きになった老人を助け出すのを見ていた警部のジャベールが、マドレーヌが元徒刑囚のジャン・バルジャンであることに気付き、不穏な空気を漂わせて話を閉じる。
 今回の二作の話を聞いて、宮沢賢治の童話集と『レ・ミゼラブル』を再読、再再読したくなった。
講談と朗読劇は紙一重で重なるという思いをますます強くした。


3月23日(日)10時開演、なかの芸能小劇場、木戸銭:2100円

 

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