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劇団モンスーンといえばPRISONのイメージが強く、観劇日記で過去の公演を振り返って見た。
2024年が社会ドラマ『PROTECT』、22年が『CASE』、19年が『ERROR』、18年が『CRIME』、そして17年3月に『PRISON』を観ていたが、その内容についてはまったく覚えていなかったので、観劇日記を読み返すと今回とまったく同じ内容で今回はその時の再演であることを初めて知った次第である。
『PRISON』の既視感があったのは過去に観ているので当然としても、これまで観てきたモンスーンの劇がすべてPRISONに関連して感じられたのは、一つにはタイトルがすべて横文字であることと、場面が密室で限定された空間での出来事であり、犯罪に絡んでいることからであった。
前回の出演者で今回も出演しているのは9人のうち3名で、スリの川村役の菊地真之と、間抜けな銀行強盗杉本を演じた霍本晋規、そしてこの作品の作者で演出者でもある刑務所の看守役の栗原智紀。
内容についてはその時の観劇日記に詳しく記しており、それを読む限り基本的には変更はないようだ。
前回、殺人罪で死刑囚の松井を演じたのは岡本高英で、今回は夏井貴浩が演じており、この劇の主役とも言えるのはこの夏井役とスリの川村役で、川村がリーダー格として牢内を取り仕切っている。
前回松井を演じた岡本高英は牢名主的な存在として重厚さを見せていたが、最後の死刑台の十三階段から落ちる演技のおかしみとが落差となって見どころともなっていたが、元医者である松井を演じた夏井貴浩はその役柄を表すように絶えず本を手にしているインテリを感じさせ、自分を語らないことでミステリアスな沈着な人物として演じている一方、囚人たちがゲーム感覚で試みる死刑台の十三階段を昇るリハーサルを、松井が実際に死刑執行の際に試みて階段から落っこちて負傷したために死刑は中断され、牢に戻って来る。
沈着な夏井がずっこけ落ちるという人物像の落差の面白が、岡本高英とはまた一味異なった妙味を感じさせてくれる。
脱獄の計画と実行といい、死刑台の十三階段といい、奇想天外というより馬鹿げた話の展開の満載であるが、服役の原因となっている犯罪そのものとそれに対する刑期の重さのアンバランスなどに加え、法務大臣が変るとこれまでの方針が180度転換して死刑執行が行われることや、裁判員制度が始まって刑務所が飽和状態になっていることなど、社会批判をピリッとのぞかせているところなどは、この劇を単なる面白さだけでなく、深みをも与えている。
その他の囚人役には、国の行政機関などのHPに侵入したハッカーの戸田役の佐藤勇輝、下着泥棒で盗んだ下着を持主に戻して捕まった足立を演じる宇丘匡志、結婚詐欺師の天野役の山城直人、ほとんど口をきかず正体の知れない次原役の弓削部、そして冤罪の殺人罪に問われている新たな囚人荻野を大地参照が演じ、狭い空間の中でお互いの気持はバラバラであったのが、荻野の投獄を契機にして脱獄の計画がなされ、最初は不参加であった者も加わって、次第に全員が結束していく。
脱獄計画そのものが常識から考えても成功するはずがないものであるが、その現実離れした着想の馬鹿々々しさの面白さを楽しむことができたのは、この9人の出演者たちのそれぞれのユニークな演技によるものであった。
上演時間は、休憩なしで2時間。
作・演出/栗原智紀
3月3日(月)16時開演、池袋・グリーンシアターBASE、チケット:2000円、全席自由
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