高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
    劇団青年座 第258回公演 『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』   No. 2024-030

 出演者で観劇を決めたケースの一つ。その出演者は、山本龍二。
 タイトルから想像したのはセルバンテスの『ドン・キホーテ』。別役実作というのも関心の一つであった。
 移動式簡易宿泊所を舞台に、最初にやって来たのが医者と看護婦。続いて牧師。医者は、簡易宿泊所には必ず病人がやって来ることを信じ、牧師はその患者が必ず死ぬことを信じて、商売の為にやって来たのである。
 彼らがその簡易宿泊所に辿り着いた時、そこには誰もいないが、テーブルの上にはポットとグラスが置いてあり、人がいた形跡が残っている。やがて宿の亭主とその娘が戻って来て、続いて、従者一人を伴った年老いた騎士が二組現れる。
 騎士が現れてから、二人の仕業によって看護婦、医者、宿の亭主、牧師らが次々に亡くなっていく。
 二人の老騎士たちが決闘する(その場面は舞台上ではない)が、どちらも死なずに戻ってくる。
 次に死ぬのは二人の従者だが、一人は一方の従者から殺され、残った従者は、大風車に突進して死んでしまう。最後に残った娘は、殺される前に二人の騎士を殺そうとするが殺せず、最後には剃刀の刃で自分の首を切って死ぬ。
 二人の騎士は、テーブルの上の水には毒が入っていると信じて飲むが、二人とも死なず、どんな事をしても死なない。彼らは死ぬためにやって来たのだが、結局最後まで死ねないままである。無意味の意味。
 話の筋としてはこんなものであるが、この間の台詞のやりとりがこの劇の見どころであり、聞きどころとなっている。
 別役実の不条理の世界に迷い込み、騎士1の山本龍二、騎士2の山本和弘との絶妙なやりとりを楽しみ、味あわせてもらった。理屈を考えずに絶妙な会話の面白さを楽しんだ。
 出演は他に、従者1の前田聖太、従者2の桜木信介、医者の伊藤潤、看護婦の安藤瞳、牧師の若松久弥、宿の亭主の五十嵐昭、その娘の野邑光希、そしてパーカッションの朝里奈津美。
 上演時間は、休憩なしの1時間30分。


作/別役実、演出/金澤菜乃英、美術/阿倍一郎
9月30日(月)14時開演、吉祥寺シアター、チケット:5500円、座席:D列2番

 

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