3時間40分にわたる重厚なドラマで、内容も重厚で濃密なので見る方も疲れるが、演じる方も疲れるのではないかと思う。このような劇を観てまず思ったことは、民藝ならではの舞台ということであった。作品の内容もそうであるが、登場人物を演じる俳優陣も揃っていないと見せるだけのものを作り上げるのは無理である。
最近見る劇は舞台装置も簡素かほとんどない舞台が多く、それはそれでスピーディな展開でいいが、新劇の額縁舞台できっちりと舞台装置が組み込まれた劇も、たまに見るとかえって新鮮な気がして、台詞も演技も舞台もきっちりと枠に組まれたようで、「芝居を観た」という気がする。
今回、木下順二の作品ということもあって久し振りに民藝公演の予約をして、早々とこの作品を再読していたので、劇の内容と進行は手に取るように分かって、もっぱら出演者の登場人物を演じる演技と台詞を聞くのに集中して、いま、この劇が上演される意味、あるいは意義をあらためて考えながら観劇した。
昔、映画でシネマスコープというものが出現してきたとき感激して観たような、そんな舞台にも新鮮さを感じた。
出演は、ジョンスンと呼ばれるドイツ人に千葉茂則、宋(スン)夫人と呼ばれるアメリカ人に桜井明美、フリッツという名のドイツ人に山本哲也、オットーと呼ばれる日本人に神敏将、その妻に中地美佐子、ジョーと呼ばれる日本人の画家に塩田泰久、南田のおばちゃんに戸谷友など、ベテラン俳優から若手を含めて総勢20名近い出演。
上演時間は、途中10分間の休憩を2回入れて、3時間40分。
作/木下順二、演出/丹野郁弓、装置/勝野英雄、照明/前田照夫
5月17日(金)18時30分開演、紀伊國屋サザンシアター、
料金:4400円、座席:11列8番
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