高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   KAZAWA☆第13回公演 『あなたとしたい』             No. 2021-029
 

 昨年も同じ日に観劇し、観劇日記(「あーでんの森散歩道」別館・No. 2020-015を参照)にも記録しているが、あえて、というかいつも通り観劇日記を読み返さず、まったく白紙の状態で観劇したが、見ていくうちに記憶の皮(川)が一枚一枚剝がれていくように蘇ってくるものの、結末については思い出せないままでいたので、最後の最後まで初めて見るような、新鮮な気持で観劇(感激)した。
 チラシのキャッチコピーに「ちょっとスケベな、オトナたちの奮闘の物語…」とあるように、セクシュアルなお色気と、ハラハラ、ドキドキ感と、ちょっぴりしんみりさせるところと、やさしい笑いを含む良質なエンターテインメントをたっぷりと楽しませてもらった。
 それらの僕の感想を体現しているのは、元AV女優の赤城璃子を演じる若林美保、彼女の元夫でAV映画監督を演じる間天憑、赤城璃子に恋する帰国子女の堅物サラリーマン片岡を演じる岡本高英、そしてセックスカウンセラーで元AV俳優を演じる風間寛治の4人の出演者たち。
 この4人のアンサンブルが実に絶妙で、この作品の筋立てと相まってそれぞれの演技が見どころとなっている。
 友人の代わりにセックス身の上相談のユーチューブ映像を撮ることになった派遣社員の片岡が、そのセックスカウンセラーと親しくなって自分の過去を少しずつ語るようになるが、一方ではセブンイレブンで店長代理をしている赤城を恋するが、その気持ちを伝えきれずにいる。そして自分の居場所を求めて続けている、うぶで、実直で、まっすぐな片岡に共感しながら、20年ぶりにAV女優復帰というドラマの思わぬ方向へと進んでいく筋立てにハラハラドキドキしながら、赤城璃子を演じる若林美保の大胆なAV演技に今回も息を飲まされた。
 前回気づかなかった(と思うが、観劇日記を見直していないので不正確)台詞として、シェイクスピアの『ロミ・ジュリ』からの台詞が引用され、それを聞いてどんな台詞だったか聞き逃してしまったのが惜しかった。
 今回特にあらためて感じたのは、セックスカウンセラーだけでなく、臨床心理士でもあるのよ、と言って片岡の複雑な心情の心の相談に乗る風間寛治の役柄の優しさが「こころ」に残ったことであった。
 コロナ感染はこのところ少し落ち着いているとはいえ、まだ日常とはほど遠いなか、平日のマチネながらもほぼ満席状態であったのは、他人ごとではなく、嬉しい気持にさせてくれた。
 上演時間は、休憩なしの90分。

 

作/織田夜更、演出/風間寛治
12月3日(金)15時開演、浅草リトルシアター、木戸銭:4500円、全席自由席

岡本高英氏のFBより

写真提供:岡本高英氏のFBよりご承諾を得て掲載。

 

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