第一部は、銀色に輝く夜の砂漠への旅が主要なモチーフとなった4作。
その1、「宇宙鳥」。
共演のパーカッション奏者立岩順三が奏でる小鳥の囀りと羽ばたきの音に続いて条田瑞穂の朗読が始まる。
砂漠に落ちた石―それは空から落ちてきた星。それを子供たちが空に向かって投げる。
光の消滅の記憶。青い子供たち。宇宙鳥の羽ばたき。
永遠の縁に向かって闇の中を旅する。
その2、アンデルセンより「赤い靴」。
あの子が欲しいと言っていた赤い靴の約束。
何足だって買ってあげると言ったその時の子供だった彼は、今は旅人。
夜空から赤い靴がいくつも落ちてくる。
「ねえ、今、いちばん何が欲しい?」
旅人の彼は心の中でその少女に語りかける。
淡い夢。
ここで条田瑞穂は自分が育った秋田の思い出話と、18歳から住み続ける新宿の話と、生まれた満州について語り、
その3、迷い鳥より「百年の革命」。
21世紀の図書館の片隅で、百年前の詩集との出会い。
ベンガルの詩人。
次の百年後にこの詩集を読む人は誰か?
その4、サハラのオマージュ「砂の揺りかご」。
砂漠の砂の慟哭―砂漠は我が身を慟哭する。
砂漠の砂たちは泣き疲れて、眠る。
「さあ、もう泣かないで、夢の世界で遊んでおいで」
10分間の休憩の後、第二部―幻想のメルヘン。擬音が切なく響く。
その1、「金色のワルツ」。
人生に疲れ果てた老女が、自分の影とワルツを踊る。
遠い昔の金色のワルツが鳴り響いていた記憶の中で、老女はいつまでも自分の影と切なく踊る。
ルーラッタ、ルーラッタ・・・・
その2、アンドレ・マルローに「パンドラ」。
貧しい詩人のパンドラの話の朗読。
パンドラ―それは「好奇心」。
パンドラの箱の底の声、
「わたしの名前は、希望」。
その3、「メビウスの輪」。
天空から吊り降ろされたマリオネット。
回るメビウスの輪。
メビウスの輪から逃げ出すことのできないマリオネット。
世界が逆しまになってしまっている。
わたしは、デクノボー。
メビウスの輪の中で、果てしなく踊り続けるマリオネット。
タカタン、タカタン・・・・
その4、古風なサーカス「フルフル」。
詩人は、幼いころのサーカスへの興味と、詩人自身が道化師になりたいと思ったことも語り、実在の道化師についてこの詩を書いたという。
飲んだくれの白い道化師、フルフル。
サーカスの人気者(だった)フルフルは、今はどこにもいない。もういない。
フルフルは死んでしまった。
赤い道化師、泣き虫ピープはサーカスに拾われ、今は戦争が始まって、客席は空っぽ、舞台も空っぽ。
サーカスは解散し、赤い道化師は兵隊として売られ、人殺しの兵士となる。
ティンドン、ティンドン、・・・
これまでにも何回も聴いた詩がいくつもあるが、共演のパーカッションの演奏で、その印象も随分と変って感じた。それがまた楽しみでもある。
この日、東京は寒く、客足が心配されたが、7名の参加(内2名は第一部終了後退席)。
「身近コンサート」の浜田博幸氏も参加され、記録の録音をされていた。
今回は、言葉の記録を少しでも残そうと、初めてメモを取った。
朗読時間は、休憩を入れて1時間10分。
2月8日(金)19時開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロンにて
料金:1000円(ドリンク付き)
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