作/真船豊、演出/上村聡史、美術/乗峯雅寛
出演者/浅野雅博、石田圭祐、倉野章子、名越志保、𠮷野美紗、浅海彩子、木津誠之、他
(総勢14名)
紀伊國屋ホール、座席:C列7番
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【観劇メモ】
真船豊の『中橋公館』は自分が生まれた年、生まれた月である昭和21年(1946年)5月に発表された作品で、その年に千田是也演出で俳優座によって上演されたのが初演であるという。
それから71年たって、今回、文学座創立80周年記念の一環として今回上演されている。
記念公演にふさわしい重厚な作品で見ごたえのあるものであった。
何よりも出演者の演技がいい。
特に感銘を受けたのは、浅野雅博が演じた主人公の中橋勘助の母あやを演じた倉野章子と、父徹人を演じた石田圭祐の演技であった。
最後のシーンでは、虚脱状態となった徹人の石田圭祐はリアを感じさせるものがあり、彼がリア王を演じる舞台をいつか是非見てみたいと思ったほどであった。その最期のシーンから振り返ってみれば、中橋徹人の生きざまはリア王そのものであるとも感じられるものであった。
劇中で、中橋勘助の中国人の友人宋啓光(舞台には登場しない)の、「中国人の精神の貧困堕落は宋時代の終わりに始まった」という言葉は示唆的であった。
中国文学、唐の時代の詩など読んでいると、今の中国からはとても同じ国の人物のものだとは思えないのだが、この宋啓光の言葉を聞くと、何となく理解できる気がする。
この宋啓光は真船豊とも親交があった実在の人物がモデルとなっているというから、この事は真実ともいえる。
舞台の場面転換では、劇中歌として中国の歌が歌われ、また劇中でも歌が入るが、そこに井上ひさしの世界を感じさせるものがあって、親しみ深かった。
上演時間は、途中15分間の休憩を挟んで、3時間。
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