『北国の春』 15時~16時
原作/鹿沢信夫、構成・演出/鈴木忠志
『サド侯爵夫人』 (第二幕) 17:30~18:45
作/三島由紀夫、演出/鈴木忠志
吉祥寺シアター、チケット:(通し券)6000円、座席:G列8番
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【観劇メモ】
『北国の春』は2014年に観た『からたち日記由来』と同じ系列の作品で、チンドン屋が登場。
舞台奥にはチンドン屋の夫婦が相対して座っており、上手寄りの舞台前面には片膝ついて一人の男が、開場から開演前までの10分間以上座ったまま、板付きで身動き一つしないでいる。
開幕は、チンドン屋の女が歌う「北国の春」から始まる。
男は、このチンドン屋夫婦の息子で、引きこもり症候らしく、3人の男と一人の女が彼の心の中にとりつき、彼らが彼と内的会話を交わす形で進行するが、暗い舞台の中で重苦しい台詞で、途中何度も睡魔に襲われた。
しかしながら、演劇の可能性ということで、深く感じさせるものがそこにはあり、考えさせられるものがある。
一方の『サド侯爵夫人』については、観劇後、たまたま耳にした若者の感想で「やばい!」という言葉に凝縮されたものを感じさせられた。
今どきは、なんでもかんでも「やばい」の一語ですべてをすませてしまう傾向があるが、観劇直後にはその感想の言葉がなく、この「やばい」という言葉は便利ではあると思うが、言葉の貧困さを感ぜずにはいられない。
この劇に登場するのは、サド侯爵夫人ルネ、その妹アンヌ、二人の母親モントルイユ夫人、彼女の友人サン・フォン伯爵夫人、そして男一人である。
濃縮された台詞のやりとりに息詰まるような緊張感みなぎる舞台で、『北国の春』とはまた異なった演劇の一つの極限的なものを感じさせる舞台で、それが「やばい」につながっていたと思う。
感想を書こうと思えば、一つの演劇論を書くようなものとなるだろうが、今、それを書くには自分には荷が重すぎる。
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