『邪宗門』(作/林 和)、『空気はぜひ必要です』(作/鴇田英太郎)、企画・演出/川和 孝
両国・ シアターX、チケット:2500円(特別割引) |
【観劇メモ】
短編小説を読むような味わい深い舞台であった。
埋もれた作家、作品を掘り起こし、今日の世界に蘇らせてくれるこの企画は貴重な存在だと思う。
『邪宗門』は大正4年の作品で、悲劇の部類に属するだろう。
物語は、諸国遍歴の若い武士が、目の見えない住職の荒れ果てた寺に一晩の宿を借りるところから始まる。
その武士が住職の目が見えなくなったいわれの夢を見る。
3代将軍家光の死去に乗じて忠臣の家老は、ご禁制の邪宗を信じる主君に殉死という手段でお家の家名を保とうと説得を図るが、自殺を禁じるキリスト教を信じる主君がそれを受け入れられるはずはなく、家老はやむなく主君を刺し殺す。
しかし、ここには伏線があって、この殿は家老の妻と深い関係があって、家老の手にかかって殺されることをむしろ喜び、それを待っていたふしがある。
殿を愛していた家老の妻も後を追って死に、その時になって初めて家老は妻の不貞を知る。
目が見えていた時には物事が見えておらず、家老は脇差で自分の目をつぶす。
目の見えない住職は、実はその家老であったことを知り、そのおぞましさに武士は早々に立ち去る。
ゆっくりとしたテンポで展開するが、上演時間は50分にも満たない。
『空気はぜひ必要です』は昭和4年の作品で、うって変わって喜劇となっている。
愛し愛されて夫婦となったはずの二人が、夫の寝言で夫婦喧嘩となり、妻は家を出て行く。
夫は劇作家で、これでゆっくり作品が書けると思う矢先に、次々と御用聞きや押し売りなどが押しかけてきて何もできない。最後には彼の妹がやってきて、詩人である夫と夫婦喧嘩して家を飛び出してきたと言う。
妹夫婦の喧嘩の原因も全く同じなら、彼らのなりそめも口説き文句も劇作家夫婦と一字一句違わず同じであるというのがオチで、そこで終わる。
これも40分程度の作品。
途中15分の休憩を挟み、2つの作品で2時間足らずであった。
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