作/井上ひさし、演出 鵜山仁、美術/堀尾幸男
出演/ 平淑恵
紀伊國屋ホール |
【観劇メモ】
昨年亡くなった井上ひさしの追悼公演。
これまで木村光一演出で、渡辺美佐子によって演じられてきた『化粧』が、今回から装いも新たに鵜山仁演出、平淑恵の演技で再出発。
渡辺美佐子の演技で過去2回見ているが、それまでこの劇を理解していたと思えない発見が今回あった。
まず美術の面で、役者名の幟がボロボロで傾いて今にも崩れそうな状態の意味を理解していなかった。
その幟が劇の途中でさらに傾き、何かが崩れる音が何度かするが、それはこの小屋を壊している為のものであるということを分かっていなかった。
平淑恵演じる五月洋子は、取り壊されつつある芝居小屋の中で、半ば狂った状態で現実と自分が演じてきた芝居の役とが混在している。
ときおり自分を取り戻し、トシ坊とういう使い走りの役者の名前を呼ぶが答えがなく、自分の周囲に誰もいないことに気づくが、すぐにまた自分の空想の世界に戻っていく。
20年前に捨てたわが子と、芝居の筋立てがまったく同じように平行して語られ、我が息子との再会の悦びも束の間、二人を結ぶ絆の守り袋の鬼子神が、入谷と雑司ヶ谷と場所違いであったという結末の悲喜劇。
今回の演出でこれまでと大きく異なっているのは、最後の場面で五月洋子が舞台の上で宙吊りになった状態で芝居を演じるところであるが、これは役者五月洋子の昇天を暗示するものとしてとらえることができる、と後になって思った。
休憩なしの1時間20分の一人芝居、大変なことだとあらためて思う。
<私の観劇評>★★★★
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