作・演出/坂手洋二、美術/加藤ちか
出演/渡辺美佐子、田岡美也子、児玉泰次、猪熊恒和、佐古真弓、鴨川てんし、河野しずか、中山マリ、川中健次郎、大西孝洋、吉村直、他
下北沢、ザ・スズナリ |
【観劇メモ】
加藤ちかの舞台装置が面白いと思った。
最初は防空壕の場面から始まって、そのあとこのドラマの舞台である鯨丸市の鯨肉を食べさせる食堂であったり、捕鯨船の甲板になったりするが、昔デイズニーの映画で見た、ピノキオが鯨に飲み込まれた、あの鯨のお腹の中のように見えた ― 鯨の腹の中での出来事の寓話 ・・・(その防空壕は僕が小学生だった頃にも残っていた)
坂手洋二の劇には、時に言い知れぬ憤怒の気持ちを掻き立てさせられ、向けようのない怒りで興奮する。
先の戦争での、まったく関係のない市民への無差別の空襲への怒り。
(北九州の空襲の話も出てきたが、長崎ではなく、予定通り小倉に原爆が投下されていたら、今の自分は生まれていなかった。そして小倉にあった造兵所跡は、僕が小学生のとき、今の団塊の世代が後に続いていて、教室が不足してきたので4,5年生は分校としてそこに通ったのだった。その頃1教室は60名近くの鮨詰めだった)
アメリカが敗戦国であったら戦犯として処刑されているであろう人物が、日本国家から表彰されている茶番劇。
枯葉剤を大量散布したアメリカのベトナム戦争の批判となるはずの国連人権会議が、当のアメリカの提案により捕鯨問題にすり替えられ、商業捕鯨のモラトリアムが決定されたというすり替えの矛盾。
昔欧米人は照明用のろうそくのために鯨を乱獲し、鯨油を取った後はすべて海に捨ててしまっていたというのに。
このドラマでも警鐘が鳴らされているが、鯨を保護することで海の食物連鎖が断ち切られ、将来、まったく逆の主張が出てきたりすれば、それこそ茶番もいいところだ。
こんな怒りをどこにぶつければいい?
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