原案/小島章司、演出・振付/ハビエル・ラトーレ、音楽/チクエロ、美術/堀越千秋
キャスト/小島章司、ナニ・パーニョス、イレーネ・ロサノ、ベゴニャ・カストロ、他
ル テアトル銀座 |
【観劇メモ】
小島章司のフラメンコを見るのはこれが3回目である。
初めて小島章司のフラメンコを見たとき、それまで抱いていたフラメンコのイメージが完全に覆され、衝撃的なしびれ、とでもいうような戦慄を感じた。
今回はその小島章司の舞踊生活50周年を記念しての公演であり、彼が敬愛するスペインの詩人ガルシーア・ロルカへのオマージュとしての<愛と平和三部作>の最終章として創作されたものである。
舞台美術はスペインに在住の画家、堀越千秋。劇場に入ってまずこの舞台美術に魅せられた、というか圧倒された。舞台背景全面に、巨大なX字の抽象画。そして舞台中央前面に、やはり抽象的な銀色のオブジェが吊るされている。
開演前の「携帯電話の電源をお切り下さい」などという野暮なノイズも、開演の合図もないままに、舞台は溶暗し、音楽が奏せられる。
序章は、真っ赤な衣裳を身につけたベゴニャ・カストロの踊りから始まる「予兆」。
内容も何もわからないのに、僕はこの場面が終わる頃には胸に熱いものがこみ上げてきて、自然と涙がこぼれた。
次の場面は少年3人が、「警戒せよ」の詩を朗誦。
以下、特別出演のナニ・バーニョスとイレーネ・ロサノによる「愛」、ベゴニャ・カストロが加わっての「恐怖」、続いてペゴニャ・カストロ他による「憎しみ」、小島章司とナニ・バーニョスによる「死」、イレーネ・ロサノ他による「孤独」、ペゴニャ・カストロ他による「不在」、そして小島章司以下全員による「喜び」で最後を飾る。
休憩なしで1時間40分ほどの時間が瞬く間に過ぎ去った。
なにか凄いものを見た、というずっしりとした高揚感に押しつぶれそうな気持で劇場を後にした。
|