作/コビヤマ洋一、演出/金守珍、舞台美術/大塚聡+百八竜
出演/大貫誉(男)、広島光(青年)、渡会久美子(女)、黒傘男(コビヤマ洋一)、三浦伸子(水商売の女)、他
下北沢、ザ・スズナリ |
【感想】
新宿梁山泊20周年記念企画として、コビヤマ洋一の作品3作連続上演の第一弾。
僕は3作通しのチケットを予約したので、合計で6000円と割安となった。
この作品はチラシによれば、1994年に高円寺の稽古場発表会として初演され、その後96年、98年、2000年と再演されている。キャストとしては、初演以来「男」役の大貫誉だけが一貫して同一役を演じている。
話の荒筋はざっといってこうである。
派遣社員のアルバイト青年(広島光)が道路工事(?)の現場の夜警をしている。誰も来るようなことのない道路に一人でいるところに、雨も降っていないのに黒い傘をさした謎の男(コビヤマ洋一)が通りかかって青年に話しかける。また一人になったところで、交代勤務の夜警の男(大貫誉)が現れる。そして、「まだ生きていますか」というモールス信号の音。男は元陸上自衛隊で通信兵をしていたということでそのモールス信号を解読できた。男は夜警の仕事を放り出して、青年とともにそのモールス信号の主を探しに出かける。暴走族の連中に人間違いされて襲われ、半死の状態で倒れているところを、女(渡会久美子)に助けられる。実はこの女がモールス信号を発していたのだった。女は、マンションの窓から自殺して飛び降りた女の顔が自分の方を見て笑って落ちえていくのが見えた、その顔が、鏡を見ると自分の顔であった・・・。引きこもった彼女を呼び出そうと、青年と男は戸口の前でアメノウズメのように、ボレロを踊る。・・・そして気がついたとき、青年は上半身裸の姿で、元の道路工事現場の前で眠っていたところをあまりの寒さに目を覚ます。
上半身裸でボレロを踊る大貫誉と広島光の、削ぎ落としたような無駄のない筋肉質の体に魅せられた。
渡会久美子の寡黙な立ち振る舞いに、深い孤愁が漂っていた。
コビヤマ洋一は、その存在自体が謎のような雰囲気を常に持っている。
夢と現実が交錯するシュールな世界。生の向こう側に在る肉体を超えた魂の世界からの声のようでもある。
1時間10分という凝縮された上演時間の中で、ひと時の不思議な世界を浮遊した。
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