作/中島淳彦、演出/久世龍之介、美術/柴田秀子
出演/加藤健一、畠中洋、加藤忍、さとうこうじ、有福正志、浅野雅博、他
下北沢・本多劇場
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【ストーリーと感想】
今は懐かしい大阪万博の1970年が時代設定。世はまさに高度成長期の幕開け。僕は大学を出て社会人2年目で某保険会社に勤務していた。プログラムに、この1970年の一年間の主な事件と当時の物価が載っている。大学卒の初任給が男子36,000円、ラーメンが150円、はがきが7円で封書は15円、タクシーの基本料金(東京)が130円だったとある。この年の衝撃的な事件として、3月によど号ハイジャック事件があり、11月には作家の三島由紀夫が東京・市谷の自衛隊に乱入し割腹自殺している。「人類の進歩と調和」をメインテーマにして開催された大阪万博はそんな時代の出来事の一つであった。
物語は、宮崎県のとある地方で、そこで食堂とラブホテルを経営していた母親ひさ子が突然亡くなり、その通夜が行われている。通夜にやってくる弔問客は遺族には見知らぬ顔ばかりで、そこに珍事件が引き起こされる。通夜の振舞い酒の相伴にあずかる見知らぬ客(さとうこうじ)は、酒の飲みすぎでトイレばかり通っている。またいわくありげな二人の中年の男性が故人の人徳を偲ぶようにして、長男の康夫(加藤健一)に話しかけてくる。そのいわくありげな様子が次女珠子(高橋麻理)の本当の父親ではないかと、長男のいとこ賢作(新井康弘)が疑う。次女珠子は二人の兄と姉と年が離れて生まれただけでなく、顔も似ていないということで、小さい頃から拾われてきた子とからかわれてきた。僕らもよく小さい頃、叱られたりするとよくおまえは橋の下で拾ってきた子だと言われたものだった。通夜の客の一人が旅行代理店の者(外波山文明)で、母親が万博の申し込みを5人分していたと言いだす。何もかも母親が亡くなって起こってきた知らぬことばかり。おまけに康夫が飲み屋で関係をもったことがある女性の亭主がやってきて、康夫の母親がその償いに毎月決まった日に15000円の慰謝料を払ってくれていて、今日が丁度その日だと支払いを要求してくる。母親は毎日欠かさず日記をつけていたので、もしや何か書き残していないかと、康夫はラブホテルに行ってみると、何者かに荒らされた形跡がある。がとにもかくにも日記を無事探し出した康夫は、今度はそれの隠し場所に一苦労する。通夜の客をそのラブホテルに泊めると、そこでまた一騒動起こる。例のあやしげな二人組みの一人が、長女千代子(加藤忍)の元亭主である山下(畠中洋)と一緒にやってきた東京のレコード会社の男(伊原農)に夜這いをかけてきたのだった。もう一方の男は、首吊り自殺を図って失敗する。その二人は実はホモの関係で、長い間母親の経営するラブホテルに通っていたので、母親が世間体をはばかるようなことを日記に書き残していなかった気になって、実は康夫より先にホテルに忍び込んでいたのだった。通夜の翌日、康夫はどこから都合をつけたのか、飲み屋の女の亭主に15,000円渡す。そこへ康夫の妻の君江(富本牧子)が、香典が盗まれたと騒いでやってくる。怪しいのは通夜の相伴酒でトイレばかり行っていた見知らぬ男に違いないと取り押さえる。彼は香典泥棒ではあったが、彼の前に喪主である康夫の父親が、大阪万博の旅行費用分の20万円だけ盗んだのだった。康夫も香典から15,000円を抜き取っていたのだった。もつれにもつれた人間関係も最後には糸がほぐれるようにすっきりとする。
これを宮崎弁で演じているので親しみがあって、さわやかみのある喜劇に仕上がっている。
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