2025年髙木登観劇日記
 
   Ad Libitum Players 公演 "THE TAMING OF THE SHREW"    No. 2026-004

躍動的で意欲的な Staged Reading

 会場に入場した時からすでに出演者たちは、客席に背を向けて椅子に腰かけて勝手な談笑をしている。
 右手の舞台奥に、パソコンのモニターに音楽とともに映像が走っている。開演時間になっても何の合図もなく、モニターの音が大きくなって、画面の中で紺色のスーツを着た政治家らしき男が激しくしゃべりだす。
 そのなかで、やたら"hail"あるいは"hale"という言葉が強く繰り返される。その状況からすると、「引っ立てる」意味のある"hale"と言っていたのかも知れない。細切れの画像の中での突然の台詞だったので、その男の台詞の内容までは聞き取れなかった。
 モニターの画面はそこで消され舞台が始まるが、そのモニターの演出は、オリジナルの「序」の場にあたる鋳掛屋のスライの場面の代わりのように思われた。
 入場時にもらった本日の公演に関する情報のチラシを全く見ないままで観劇したので、原作との絡みでかなりの思い違いがあったことに気づかされたのと、その思い違いを(思い違いと思わずに)楽しんでいた自分であった。
 原作との違いが出てくるのは最初からで、ルーセンショーとその召使のトラーニオの登場で、場所がアメリカのテネシーに置かれていたことであった。
 まず、自分の勘違いからあげると、出演者が一部登場人物を複数演じているという勘違い。
たとえば、ルーセンショーとホーテンショー、バプティスタ(この劇では女主人のグルーミアに替えられている)とグレミオなどを一人二役で演じていると思って見ていた。
 そのため、この劇の進行中、その内容に時々戸惑うこともあった。
 この観劇日記を書くために、当日もらったチラシを改めて読んでみて、自分の誤解に気づいた。
 現代のアメリカ南部のテネシー州の大君で二人の娘を持つバプティスタ・ミノーラは、この劇の始まる前にすでに亡くなっており、召使いであったグルーミアが二人の娘の結婚から邸の経営の一切を託されているという設定。
 しかし、自分はこのグルーミアをミノーラ夫人とビアンカの求婚者の一人であるグレミオの二役を演じていると思い込んで見ていた。
 ルーセンショーの召使いトラーニオと、ペトルーチオの召使いグルーミオも一人二役で演じられていると思って見ていたのだが、これもこの劇では、トラーニオが二人の主人に同時に仕えているという設定であった。
 ペトルーチオは、この劇では登場しないホーテンショーではなく、ルーセンショーの親友ということになっている。
 事前にこれらのキャスティングの紹介を読んでいれば混乱することはなかったのだが、それを見ていなかったので登場人物の関係がもつれてしまって劇を見る羽目になったのだが、かえってドタバタ喜劇的に感じられるという面白さを感じながら観ていた。
 登場人物を倒錯して見ていたのはあながち自分のミスとも言えない場面もあった。
 ビアンカの家庭教師としてルーセンショーがキャンビオに扮し、リュートを教えるホーテンショーが同時に出る場面では、一部、キャサリーナを演じるオガワ・ミサがその役を演じたりしているので、ホーテンショーも登場しているように思っても間違いとは言えなかった。
 最後の三組の結婚は、ペトルーチオとキャサリーナ、ルーセンショーとビアンカ、そして未亡人(ここではミノーラ家の召使いであったグルーミア)と結婚するのは、ペトルーチオとルーセンショーという二人の主人を持つトラーニオであった。
 この翻案劇とオリジナルの内容に対する誤解や取り違えなどを、チラシを読むことで、観劇時と観劇後に二度の楽しみを味わうことが出来た。
 出演者は6名で、ペトルーチオにアトム、キャサリーナにオガワ・ミサ、ルーセンショーにアレクサンダー・オマレイ、ビアンカにセリザワ・キョウカ、トラーニオにワチ・ダイチ、グルーミアにアサヒ・ユウ。
 上演形式は、Staged Readingとあるが、台本を持ちながらであっても立ち稽古と同じで、殆ど台詞は入っていての所作と台詞であった。
 ただ、チラシに書かれている政治的要素については、ヒアリング力の貧しさのせいか、台詞を通しては感じられなかったのは、自分にとって残念であった。
 シェイクスピアの初期の喜劇にふさわしい、若さとダイナミックなエネルギーにあふれる意欲的な演技と台詞力を十二分に味合わせてくれ、結果的には自分の勘違いを楽しんだ舞台であった。
 上演時間は、15分間のインターミッションをはさんで、1時間40分。

 

演出/オガワ・ミサ、演出補/アサヒ・ユウ
1月31日(土)18時30分開演、幡ヶ谷・OUR SPACE、
料金:2500円+1ドリンク(500円)


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