2025年髙木登観劇日記
 
   新地球座公演 荒井良雄沙翁劇場 第49回 『マクベス』     No. 2025-045

 「新地球座」は荒井先生によって2012年12月に発足されたが、新地球座として『マクベス』を上演したのは、2016年4月23日、自由が丘の"STAGE悠"での荒井良雄記念「春のシェイクスピア祭」のみである。
 その時は二部構成で、第一部を坪内逍遥訳・清水英之台本構成により、マクベスを久野壱弘、ダンカン、医師、マクダフを高橋正彦、マクベス夫人を倉橋秀美、ウィッチ(魔女)を荒井先生の学習院大学での教え子であった関根恵子、二村昌子、渡辺恵子の三人が演じ、その他の役を清水英之、西野康行、高木登で演じた。
 第二部で、坪内逍遥訳、高木登台本構成による「二人芝居『マクベス』」が、久野壱弘、高橋正彦、倉橋秀美の三人によって演じられた。今回はその台本により、ヴィオロンでの新地球座として初めての『マクベス』を上演することになったものである。
 「二人芝居『マクベス』」の登場人物は、マクベス、マクベス夫人、魔女1,2,3と門番のみである。
 構成内容は、三人の魔女登場の場とマクベスが魔女に出会う場に始まって、マクベス夫人が夫の手紙を読んでいる場、続いてマクベスと夫人が王ダンカンを殺害の相談をし、実行に移す。
 門番の登場の場の後、マクベスと夫人がダンカンを殺した後の不安に苛まれ、宴会の場でマクベスはバンクォーの亡霊に脅かされるという失態を犯す。
 マクベスは自分の運命を知るべく、自ら魔女のもとに出向く。そこで魔女から告げられたのは、女の腹から生まれた者にマクベスは倒せない、ダンシンネーンの森が動くまでマクベスは敗れることはないということであったが、最後に見せつけられたのは、バンクォーの子孫が王位に就くという幻影であった。
 正気を失ったマクベス夫人は夜な夜な夢遊状態で徘徊し、血で汚れた手を洗い流そうと何度も手をこすり合わせ、悲痛な叫びをあげる。
 マクベスは夫人の死を知らされ、「明日が来たり、明日が去り、また来たり、また去って」と傍白し、舞台の上で演じるみじめな俳優でしかなく、自分の運命も「たわいのない話」として語る。
 最後は、原作にはない、三人の魔女が再び現れ、「きれいは、汚い、汚いはきれい」と言って舞台が閉じられる、という構成にして終わるようにしていた。
 ところが、この朗読劇はそこで終わらせず、原作通りに、マクダフがマクベスの首を持って参上し、マルコムに「スコットランド国王万歳!」と叫び、それを受けて薹史子が演じるマルコムが「いずれ近いうちに一同の忠誠を明らかにしたうえで・・・スクーンでの戴冠式にはこぞって参加してもらいたい」というむすびの言葉で終わらせた。
 この付け足しは演出者の考案で台本構成者にも内緒で、観客の参加者にも知られないようにして、キャスティングリストにも入れないサプライズとして行われた。
 台本作成者の自分には大いなる驚きであったが、非常に効果的で大変良かった。二人で演じられる『マクベス』という要望で構成した台本なので、本来はこの最後の台詞を入れないとストーリーが完結しないので苦肉の策として三人の魔女の台詞を入れることでまとまりをつけたのであったが、サプライズとしてこの場面を入れたことで二重の効果を生み出すことができた。
 マクベスとマクベス夫人だけの登場に、三人の魔女が劇の進行の接着剤的役割として場面場面において、「シュッ、シュッ」という陰の音を立てて常に魔女が見守っている様子を暗示していた工夫も効果的でよかった。
 魔女2とマクベス、マクダフを高橋正彦、魔女1とマクベス夫人を倉橋秀美、魔女3と門番、マルコムを薹史子が演じた。 圧巻は、おどろどろしくも凄みがあるマクベス夫人を演じた倉橋秀美の演技が見ごたえ十分であった。

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
11月26日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン


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