2025年髙木登観劇日記
 
   新地球座公演 荒井良雄沙翁劇場 第46回
          『間ちがひつづき』               
No. 2025-016

 朗読劇に先立って『間違いの喜劇』が荒井先生にとってシェイクスピア劇との最初の出会いであったことが、尾崎廣子によって「先生とシェイクスピア『間違いの喜劇』の思い出の記」として語られた。
 『間ちがひつづき』は、2018年3月の新地球座第16回公演で一度上演されており、今回はその再演となる。
 当時の出演者は、ドローミオー兄弟と公爵を久野壱弘、アンチフォーラス兄弟とイーヂオンを高橋正彦、エードリエーナを白井真木、ルーシーアーナとイーミリアを倉橋秀美で、今回、久野に代ってドローミオー兄弟と公爵を演じた瀧本忠以外、前回とまったく同じキャスティングである。
 感想としては、テンポよくスピード感があって、面白さを心ゆくまで楽しませてもらった。
 観客席からも途中で何度も笑い声が聞こえてきた。
 朗読劇で、衣装もそのままで双子の兄弟をそれぞれ一人で演じるので、この物語をまったく知らない人は戸惑うことだと思うが、そんな心配など関係なくみなさん楽しんでくれたようだ。
 この芝居は舞台でもドローミオー兄弟が一番の見どころで、ドローミオーの演技次第で面白くもつまらなくもなるといっても過言ではないが、そのドローミオー兄弟を演じる瀧本忠がよかった。
 途中で台詞を飛ばしかけたり、予定の所作を失念してしまったりしているのだが、軽妙洒脱で、話の展開がスピード感をもって展開しているので、逆にその小さな失策が面白みと重なってプラスに働いていたように思う。
 観客の一人でシェイクスピア・シアター1期生のOさんの感想として、3幕2場のアンチフォーラスとエードリエーナの妹、ルーシーアーナとの会話の部分がカットされていることについて、一番大事な場面が抜けているという不満が述べられたのは傾聴すべき点であった。
 ドローミオー兄弟とアンチフォーラス兄弟を演じた二人もシェイクスピア・シアター1期生であり、同じ1期生としてシェイクスピア劇を演じてこられたOさんの感想だけに貴重なひと言であった。
 この沙翁劇場での朗読劇は、上演時間と出演者の数と顔ぶれを考えて台本を構成していることもあって、シェイクスピア劇に詳しい観客にとってはそれぞれに言い分もあることだろうと参考になる意見であった。
 観客数は、定員いっぱいの20名と盛況であった。


翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
3月26日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン


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