2025年髙木登観劇日記
 
   劇団山の手事情社二本立て公演 『マクベス』             No. 2025-009

 『オセロー』を観劇した後、次の『マクベス』までの2時間あまりの時間、休憩する場所を探して目白駅まで歩いて行くが適当なところがなく、結局戻って劇場近くのインドカレー店でチキンカレーセットを食べて時間をつぶす。
 『マクベス』の舞台は『オセロー』とは異なり、今度は平土間の上に大きな楕円形の白い舞台をしつらえていた。その舞台後方には、2メートルほどの高さのある木製の椅子が玉座のようにして据えられている。
 登場人物はマクベスを演じる者以外全員同じ衣装で、光の加減次第で衣装の下の隠れた肉体が生々しく透けて見える。登場人物は全員が魔女で、その魔女たちが『マクベス』の劇を演じ、マクベス役を除いた魔女たちはそれぞれ登場人物を二役演じ、 「人生は歩き回る影法師、舞台の上でのたうち回る哀れな役者に過ぎない」、そのことを魔女たちが「悪夢」として紡ぎ出す。
 この舞台の特徴は、登場人物全員を女優だけで演じることと、魔女たちが演じる劇に仕立てたところにあるが、自分が特に注目したのは最後の場面。
 マクベスが殺され、マルコムの王位継承の宣言の後、そこで終らずにマクベス役を含めて全員が楕円形の舞台の周囲をぐるぐる回りながら歌うようにして語る。その内容は覚えていないのだが、その時直観的に感じたのは、原作で言えば3幕5場に当たる魔女たちとヘカテが登場する場面で、ダヴェナント版『マクベス』にはミドルトン作の『魔女』の、ヘカテと魔女たちが唄う唄が挿入されているが、それを取り入れているように思われてとても興味深かった。
 そうやって見ると、マクベス役はヘカテであると見ることが出来る。
 この劇は演出者の言葉を借りれば、「女は化ける。化け物たちが、私たちの心の中に潜む闇」を照らし出す劇であったが、その闇を祓う「明るい光を灯し世界を祝福する」とまでは感じなかった。
 出演は、マクベス役の中川佐織を含め総勢7名で、主要な登場人物のマクベスをはじめ、マクベス夫人、ダンカン、マルコム、マクダフ、バンクオー、シートン、フリーアンス、マクダフ夫人、マクダフ夫人の息子、ロスなどを演じる。
 上演時間は、休憩なしで75分。


構成・演出/斉木和洋、衣装/綾
2月22日(土)16時分開演、シアター風姿花伝、チケット:3500円、座席:4列9番


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