デズデモーナをシテにした夢幻能仕立ての舞台
劇団山の手事情社が創立40周年を迎え、その節目の締めくくりとしてシェイクスピア四大悲劇のうち、『オセロー』と『マクベス』を1作品75分間に凝縮した創作劇を1日で両方観劇し、最初に『オセロー』を観た。
平土間の中央に四畳半大の真っ白な舞台、その舞台上に真っ白な木製の椅子が置かれてあり、上手の平土間にも同じような木製の椅子が置かれている、それだけの舞台装置。
開演とともに四畳半の舞台にだけスポットライトがあたり、体全体を衣装で覆い隠すようにして椅子に伏せった人物が一瞬照らし出されるが、すぐにライトが消え再び闇と化す。が、すぐに再びライトが照らされ、平土間舞台の上手に真っ白な衣装を着た女性が一人。その女性は明らかにデズデモーナを想起させ、四畳半の舞台上の椅子に伏せった人物に語りかける―「オセローはなぜ死んだのか?」と。しかし、その人物は体全体をマントで覆ったようにしたまま動かない。
舞台後方は、細い紐が簾のようにして紗幕の役をしており、その紗幕の内側でその他の登場人物たちが、オセローの生い立ちとデズデモーナとの出会いのいきさつをコーラスの輪唱のようにして語る。
舞台は狭い四畳半の上で演じられ、生きているデズデモーナが登場し、白い衣装を着た女性は「デズデモーナの魂」として、時に「語り部」ともなる「観る人」となって我々を夢幻能の世界へと誘う。
舞台上に登場する人物は、オセロー、デズデモーナ、前任の総督モンターノー、オセローの副官キャシオー、旗手のイアーゴー、イアーゴーの妻エミリア、そしてデズデモーナに横恋慕するヴェニスの紳士ロダリーゴーの7名。
狭くて窮屈な四畳半の舞台上で演じられる登場人物たちの所作と台詞は、台詞の発声と所作との微妙なずれを伴う劇団山の手事情社の独特な手法で、その所作は『ハムレット』の劇中劇の前の黙劇を彷彿させ、人形劇を観ているような感じにさせ、異次元の世界へと誘われていくような気がする。それは多分に綾の独特な衣裳に負うところが大きいような気がする。なかでも丸剃り頭にしたイアーゴーの衣裳が、その風貌と相まって印象を強くしていただけでなく、その演技所作も注意を引いた。
濃縮された舞台展開の中で、『オセロー』のエッセンスのすべてを味あわせてくれた。
出演は、デズデモーナの魂に山口笑美、オセローに山本芳郎、デズデモーナに安部みはる、イアーゴーに谷洋介、キャシオーに高島領也、エミリアは男優の鍵山大和、モンターノーに藍葉悠気の8名。
上演時間は、休憩なしの70分。
構成・演出/小笠原くみこ、衣装/綾
2月22日(土)12時30分開演、シアター風姿花伝、チケット:3500円、座席:2列11番
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