『シムベリン』は2014年11月の第14回公演で一度上演しており、同じ台本を用いての再演。これまでにも同一の作品を再演することはあってもその都度出演者の顔ぶれや人数によって台本は新たに構成してきたので、今回のように同じ台本での再演というのは初めてである。
今回、当初の予定では同じく同じ台本での再演となる『コリオレイナス』を予定していたのが、都合により出演予定者の変更で急遽変更となったものである。
同じ台本とはいえ、「マエセツ」として原作の1幕1場の冒頭部分の紳士1、2を登場させ、この物語の発端を語らせる部分を演出者の要望によって付け加えたところが異なっている。
この台本では3人の出演者によって3人の登場人物のみでストーリーを展開させる構成として、内容としても3分の1に圧縮されてかなりの省略があるので、このマエセツとしてのプロローグの場面があることによって物語の内容がより鮮明に見えるようになったのではないかと思う。
昨年7月の第42回公演『ハムレット』から上演作品について荒井良雄先生の思い出を語る「先生とシェイクスピア」を朗読劇の前に入れるようになり、今回も『シムベリン』を始める前に出演者の一人である西村正嗣が「先生とシェイクスピア『シムベリン』」を語ったので、この物語の内容とシェイクスピアの作品における位置づけがよく理解されたのではないかと思う。荒井先生はシェイクスピアの全作品を朗読されているが、この『シムベリン』はその朗読の35番目にあたり、小田島雄志訳で3時間をかけて朗読されたという。
新地球座14回目の公演では、ポスチューマスを高橋正彦、ヤキモーを久野壱弘、イモーヂェンを倉橋秀美が演じたが、今回はポスチューマスを西村正嗣、ヤキモーを高杯正彦、イモーヂェンは倉橋秀美が演じた。
西村正嗣は、「先生とシェイクスピア『シムベリン』」の朗読も素晴らしかったが、ポスチューマスの朗読演技も迫力があって大変良かったというのが自分の感想である。
音楽は、昨年5月の第41回『オセロー』公演に続いて、三間早苗のチェロ演奏。終演後にチェロの単独演奏というサービスもあった。
今年最初の公演で、参加者は18名。
翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦、チェロ演奏/三間早苗
1月22日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン
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